コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

「中学受験の失敗」が、わが家には必要だった――小学校受験不合格のリベンジを果たした娘が、学校を辞めたワケ

2022/09/10 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 中学受験のメリットの一つに、「豊富にある学校の中から、わが子に合った教育環境を選べること」がある。特に私立中高一貫校では、各校ごとに教育方針が明確に謳われているので、受験生家庭は学校を選びやすいといえるだろう。

 子ども自ら受験校を決めることもあれば、親が子どもに勧めることもあるが、後者の場合、そこには、“わが子のため”という親心があるはずだ。

 例えば、「学歴は子どもの武器になる」というお考えの親御さんは、大学合格実績で目を見張る数字を叩き出す学校を勧めるかもしれないし、中高時代は受験を意識せずに、伸び伸びと部活動などに没頭してほしいと願う親御さんは、大学付属校のほうをプッシュするかもしれない。ただ、そんな親の“良かれと思って”の助言が、すべて正解かというと、そうではないのだ。

 麻那さん(仮名・高校3年生)という一人娘を、会社員をしながら育てるシングルマザーの恵美子さん(仮名)。彼女自身は都内公立中学校から都立高校へ進み、都内の有名S大学に進学した経歴の持ち主だが、もし女の子が生まれたら、「絶対に小学校からS大学付属に入れよう!」と考えていたという。

「私は生まれも育ちも東京23区内なので、都会コンプレックスのようなものはないはずなんですが、でも正直、大学に入って仰天しちゃったんです。S大学は幼稚園から大学院までを擁する総合学園で、同級生には幼稚園や小学校から持ち上がってきた子もかなりの割合でいました。そういう子は、裕福な家の子が多く、なんというか文化が違うっていうか、世界が違うっていうか……みんな本当にきらめいて見えました」

 恵美子さんは付属校出身者が多数在籍するサークルで活動していたために、自然と付属校出身者である友人が増えていったという。

「例えば、高級ブランドのバッグを軽やかに持っていてカッコいい! と思ったこともありましたが、それ以上に、みんな人柄が素晴らしいんですよ。何事にも寛容だし、ギスギスしてないっていうか、人間の幅にゆとりがあるような……加えて、知的で落ち着きのある素敵な人が多かったんです。しかもみんな小さい頃からの仲なので、結束が強いのにも憧れました。私は大学から入ったため、どんなに頑張っても彼らのような人脈を得ることはできず、文化や教養も身に着けられない。なので娘には、早いうちからそういった環境に身を置かせてあげようと思いました」

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