中学受験「算数1科目入試」の戦略に失敗――「倍率10倍超え」入試に賭けた母が今思うこと
算数1科目入試は、「算数だけに集中できる」ので受験生人気が高いのだが、ここに思わぬ落とし穴が隠れている。算数のみで受験可能ということは、裏返せば、算数が得意な子だけがこぞって参戦しているわけだ。しかも、算数1科目入試の募集定員は、もともと極端に少ないのが一般的である。にもかかわらず、志願者数はとんでもなく多く、倍率10倍越えなんて当たり前。例年、25倍を超えてしまう人気校も存在する。
算数1科目入試は、「算数大好き」「算数が大得意」という難関校狙いの受験生にとって、午後入試の「受け皿」になっている側面がある。そういったつわものたちが、まるで「道場破り」のような気持ちで挑戦する入試といえるかもしれない。
そもそも、なぜ算数1科目受験が増えているのかといえば、「算数が得意な子は、入学後の試験において、ほかの教科でも高成績」という実感を持つ学校が多いから。大学の合格実績を気にする中高一貫校は、極論でいえば、算数ができる子こそ待ち望んでいるのだ。
当然、出題レベルは高いので、志願者のレベルも高くなる。決して「お気軽簡単な入試」ではないので、リスクは相当高い入試と言わざるを得ない……それが、算数1科目入試の実態だと思う。
中学受験は親の戦略に左右される面もあるので、リスクがある受験には用意周到に保険をかけておくのが得策である。
靖子さんは、希美さんの受験を振り返って、悲しげな表情でつぶやいた。
「“D学園命”だった娘の受験。すべての入試で不合格という結果を受け、『では、どうすればよかったのだろう?』って、今でも悩んでしまいます。悩んだって、どうにもならないんですけどね……」
結局、希美さんは、2月3日に慌てて出願したK学園に合格して入学したが、今も通学途中に見かけるD学園の制服を正視できないという。第1希望には受からなかったけれど、1日も早く、K学園で熱中できることを見つけてほしいと願わずにはいられない。