工藤會の「死刑判決」を元極妻が解説! 弁護団解任と『工藤會事件』著者のインタビューから考える
別件の野村総裁の脱税問題もそうですね。村山さんもインタビューで指摘されていますが、「脱税事件ははっきり言って綱渡り」だったそうです。
「工藤會が組員から徴収した会費の一部が野村さんのプライベートな使途に充てられていると見立てて逮捕したのですが、逮捕当日に、組員供述で2011年以降、野村さんが工藤會の経費からプライベートに支出したことはないことが判明する。脱税容疑の前提事実がガラガラと崩れてしまったわけです」
子分さんたちから集めた「会費」は、組織や友好団体の冠婚葬祭や組織関係者の裁判費用、逮捕された組員の家族の生活費などに充てるのがタテマエです。ぶっちゃけ横領する例もないとはいえませんが、野村総裁は実家も資産家なので、それはないかなと思いました。
「組織のプール金の私的利用による脱税」が立件できなかったので、「みかじめ料」の脱税で逮捕(パク)りました。みかじめ料は違法ではありますが、「収益」ではあるので納税義務も発生するというわけです。まあ、みかじめ料はヤクザのシノギですから、これはしょうがないですかね。
インタビューのシメに「捜査にも、起訴にも、判決にも、多くの論点を含んでいるのが工藤會事件です」とおっしゃったのも、深いと思いました。本当はもう少し踏み込んで「工藤會ならなんでもアリ」という捜査の批判もしていただきたかったですね。
私は、この「なんでもアリ」が怖いと思っているのです。たとえば安倍元総理の射殺事件でも、被害者は元総理「だけ」ですが、死刑を望む声も多いようです。
「元総理がお気の毒だから」死刑も国葬もアリというのは、どうなんでしょうね?
ちなみに、工藤會総裁に死刑判決を言い渡したことで「一生後悔する」とスゴまれた足立勉裁判長について、インタビュアーが「エース」と言ったら、村山さんは「『エース』かどうか知りませんが」と答えたのはおもしろいと思いました。普通はスルーするかなと思うんですけど、わざわざ「『エース』かどうか知らない」と念を押したのはなぜなんでしょう?
そんな感じで、工藤會をいろいろ客観的に取材した珍しい本なのでオススメですよ。