漫画家・東村アキコ、お笑いプロ社長のいま――売れない芸人を養分にする“スター”の特性
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今週の有名人>
「結果が出なくても、ハハハッ」東村アキコ
『マツコ会議』(7月23日、日本テレビ系)
昨年亡くなった作家・瀬戸内寂聴さん。ある文芸評論家が講演会で、「女性の私小説は瀬戸内センセイ1人でやりつくした感があるので、あの人を凌ぐ作家は出てこないだろう」といった話をしていたが、確かに寂聴さんは常人とは明らかに違うところがあると思う。
寂聴さんの人生に大きな影響を与えた男性は2人いる。1人は寂聴さんが離婚して、子どもを置いて家を出るきっかけになった年下の男性。もう1人は寂聴さんの小説家デビューを支えた、才能はあるのにどうも売れない小説家の既婚男性である。
小説家の男性のサポートで、見事に小説家としてデビューを果たした寂聴さん。男性を師として仰いでいたが、いつの間にか、男性よりも売れっ子となっていく。そんな中、よせばいいのに離婚のきっかけとなった男性に連絡をしたところ、彼はすっかり落ちぶれていた。
同情した寂聴さんは、小説家の男性と若い男性をふらふらする。結局、小説家の男性と別れ、年下の男性と暮らし始め、事業に乗り出した彼のためにせっせと貢ぐが、男性は若い女と結婚。こうして2人は別れたものの、男性は会社の経営に失敗し、自殺してしまったそうだ。寂聴さんは、この三角関係を描いた小説『夏の終り』(新潮社)が評価され、作家としての地位を不動のものにしたことでも知られている。
本人にその意図があるのかどうかはわからないが、寂聴さんのようなスターというのは、結果的に周囲の人の運や生命を吸い上げて、すべてを肥やしにしてしまう人をいうのではないだろうか。ここまで強い人はそうそういないが、漫画家・東村アキコもそのタイプの人なのかもしれない。
7月23日放送の『マツコ会議』(日本テレビ系)に出演した東村センセイ。代表作『東京タラレバ娘』(講談社)は、アメリカの権威ある漫画賞「アイズナー賞」を受賞、世界30カ国で読まれているそうだ。同番組は「ちょっと変わった一般人や各界のルーキー」が出演する機会が多く、東村センセイのようなすでに地位を確立した漫画家が出ることは珍しい気がするが、なんと彼女は、2016年にお笑い事業を始め、19年には新宿・歌舞伎町にお笑い劇場まで作ったという、駆け出しのお笑いプロダクション社長でもあったのだ。