コラム
高橋ユキ【悪女の履歴書】
「医者に診せてはいけません」フィリピン仕込みの“心霊手術”で破滅した、日本心霊学会の“神さん”【豚の血・心霊手術詐欺事件 後編】
2022/07/25 21:00
演技力と度胸で始まった“治療”に、生来の野心が加わり、志摩子は独自の心霊療法を独自に磨き上げていく。お香を焚き込め、般若心経を唱え、ピラミッドパワーを利用し……と、客が信じそうなものを、片っ端から取り入れていった。
そして20代のうちに、心霊療法の副収入でマンションを購入。30代になると化粧品のセールスレディを辞めて、心霊療法に専念する。住まいもマンションから、新たに購入した新築戸建てへと移り、そこも手狭になると、敷地80坪の豪邸へと引っ越した。
敷地内には黄金のピラミッドを備え、ますます彼女は“それっぽく”なってゆく。そんな折、「心霊手術」を学びに渡ったフィリピンで出会ったのが、4歳年上のフィリピン人心霊手術師、ケニー(仮名)だった。
ケニーの心霊手術を目の当たりにした志摩子は唸った。
〈これはすごい。病巣を目の前で取り出して見せたら、患部をさするだけの私の治療よりずっと説得力がある。カネも高くとれる。私も……〉
2人はたちまち意気投合。志摩子は日本とフィリピンを何度も往復し、セブ島などで観光客を相手に施術をした。ケニーの心霊手術を間近で見ながら、志摩子は“トリック”を習得したのだ。