『ザ・ノンフィクション』舞妓は無給で休日は月2日「泣き虫舞妓物語 2022 ~夢と希望と涙の行方~ 前編」
あらすじ
京都にあるお茶屋(芸妓、舞妓を呼び客に飲食をさせる店)で、置屋(芸妓、舞妓が所属する店)でもある「大文字」に2017年3月、中学校を卒業したばかりの新人、寿仁葉(じゅには)が入る。
寿仁葉は長崎出身。『ザ・ノンフィクション』の舞妓シリーズを見て舞妓になりたいと大文字に自ら電話をかけたという。舞妓は修行期間であり、5年ほど踊り、三味線、鳴り物(打楽器)、お茶などの芸事を磨いて芸妓となる。なお、舞妓は地毛で芸妓はかつらだ。
大文字は一人一部屋が与えられ、舞妓たちの衣食住や稽古代は女将持ちだ。一方で5年間の修業期間と1年間のお礼奉公の間、舞妓たちの収入はお小遣いをもらう程度で、休みは月に2日だと伝えられていた。
寿仁葉の先輩は20歳の舞妓、果帆。寿仁葉同様、中学校卒業後に大文字で修行をしてきた。1年目の果帆は弱音を吐かず修行に打ち込み、番組スタッフの取材にも「楽しおす」と笑顔で話していたが、女将はそんな果帆の優等生ぶりを前に「手放しで喜んでええもんかな」と案じる。
女将の不安は的中し、徐々に果帆の遅刻が目立つようになる。果帆同様、2~3年目で悩みや壁にぶつかる舞妓が多いという。なぜ遅刻が直らないのか、番組スタッフは二度ほど尋ねていたが、果帆は「それがわからへんのどす」とどうにもならないようだった。
不安要素を残しつつ、果帆は5年の修業期間を終えて無事、芸妓となる。芸妓は舞いと踊りを担当する「立ち方」と、三味線など楽器を演奏する「地方」の役割があり、果帆は地方だという。舞妓から地方になるケースは珍しいが、立ち方と違って化粧にかける時間が少なくて済むと、遅刻癖のある果帆への女将の配慮もあったようだ。だが、果帆はその稽古も休むようになり、結局、花街を去ることになる。
寿仁葉は、番組スタッフに「いま辞めていかはる姉さん多いどすやんか。何か将来が不安になります」と本音を漏らす。そんな状況で、寿仁葉にとってはもう一人の頼れる先輩だった若手の芸妓、勝音も花街を去り、さらには2020年春からは新型コロナの影響で花街からは人が消え、外にすら出られない日々が続く。
寿仁葉は不安の中、朝も起きられず遅刻が増える。番組スタッフの取材にも「向いてへんのでうち、こんなやる気ない子いてどうしようもないなって思いながら」とこぼしていた。
寿仁葉のやる気に火はつかず、舞妓4年目の21年12月に長崎の実家に一度帰省する。母親から芸妓になりたいのか聞かれると、「なりたいけど……」と答えていたが、朝起きられない生活が続くようなら辞めたほうがいい、と女将から通告されているとも話す。