韓国ドラマ通が語る、『梨泰院クラス』日本版リメーク『六本木クラス』の懸念点とは?
――韓国と日本では、その歴史、社会背景、文化が異なるだけに、ファンからは「『梨泰院クラス』の舞台を日本に置き換えて、果たして面白くなるのか」といった不安の声が上がっています。渥美さんはどんなところに懸念を抱いていますか?
渥美 一番気になったのは、『六本木クラス』のティザーが、“ヤンキーの成り上がり物語”みたいだった点。竹内涼真演じる居酒屋「二代目みやべ」店長・宮部新(パク・セロイ役にあたる)の「俺の復讐は20年がかりだ」というセリフがキャッチに使用され、その演出や言い方も含め、ヤンキードラマっぽかったんです。
また、長屋ホールディングス会長・長屋茂(香川照之/チャン・デヒ役にあたる)が、宮部に「土下座をして謝りなさい」と告げるシーンも使われていましたが、本編は、宮部がそんな長屋に復讐を果たし、逆に「土下座させられるか」を軸に描かれる“成り上がり物語”のようになるのでは……と思いました。
日本人って、ヤンキーを主人公にした成り上がりドラマが本当に大好きですよね。一方、最近の韓国ではそういったドラマがほとんどなくて、ヤンキーはあくまで悪役や脇役で登場するんです。ティザーの時点で、こうした日本と韓国のドラマ文化の違いを感じました。
――確かに、パク・セロイは前科者ですが、ヤンキーという印象はまったくありません。
渥美 パク・セロイも第3話で、チャン・デヒの長男チャン・グンウォン(アン・ボヒョン)に向かって「俺の計画は15年がかりだ」と言っているんですが、ヤンキーっぽい印象は受けなかった。そもそも『梨泰院クラス』には、パク・セロイを“不良”に見せない仕掛け――例えば、もともと警察官志望であることや、刑務所内で知り合ったやくざの親分を“頼ろうとしない”など――がありましたが、このあたりは果たして、日本版リメークでも描かれるのかな? と。
また、パク・セロイも、かつてチャン・デヒから土下座を強要された過去があり、第7話では逆に「あんたが唯一できるのは土下座して罪を償うこと。僕がそうさせます」と宣言しているものの、彼はそれ以上に「自由が欲しい」から、長家を超えたいと思っているんです。
――第8話で、パク・セロイが「僕が欲しいのは自由です。僕と仲間が誰にも脅かされないよう――自分の言葉や行動に力が欲しい。不当なことや権力者に振り回されたくない。自分が人生の主体であり、信念を貫き通せる人生。それが目標です」と話すシーンがありました。
渥美 パク・セロイは、自ら復讐を思い立ったわけではなく、初恋の相手であるオ・スア(クォン・ナラ)の発案でしたし、別に復讐にだけ固執しているわけではないんです。『梨泰院クラス』は、前科者であるパク・セロイをはじめとするはぐれ者たちが、古い韓国社会で自由を獲得する話なのですが、『六本木クラス』だと、ヤンキーが復讐を果たし、業界のトップを土下座させられるかという、日本人好みの話になりそうで……。あと、香川さんが出演しているのもあって、ヤンキードラマではないですが、『半沢直樹』(TBS系)の延長線上で作られてしまわないか、というのも懸念点ですね。