【連載】わが子から引き離された母たち

あびる優が告発、才賀紀左衛門の「子ども連れ去り」はレアケースではない――元夫を罪に問えず「わが子から引き離された母たち」

2022/07/21 19:00
西牟田靖
写真ACより

 あびる優が、ニュースサイト「文春オンライン」の7月20日付け記事で、前夫で格闘家の才賀紀左衛門による娘の連れ去りを告発した。現在7歳になる娘は、才賀とその交際女性の3人で生活しているが、21年4月に東京高等裁判所により、親権者があびるになることが決定したという。

 あびると才賀は2014年に結婚。翌15年5月に娘が誕生したが、19年に離婚。このとき、親権は才賀が持つと公表された。その後、あびるは親権者変更を求める調停を起こし、昨年、正式に親権者があびるに決定。娘の引き渡しが確定したものの、現在に至るまで才賀は行動に移していないという。

 あびるは、こうした状況について「文春オンライン」の取材で、「違法な“連れ去り”状態にあるのです」と才賀を糾弾している。

 このニュースが報じられると、ネット上は騒然。「裁判で決まったのなら素直に子どもを優さんに引き渡すべき! これ略取・誘拐罪になるんじゃないのかな?」「親権が法的に正式に認められた。強制的に執行のようなことはできないんだろうか」と、法律について疑問を抱く声や、「才賀の親権が棄却された、というのは、生育環境に問題があると見なされた。なかなかないことだと思う」「法的にはあびるに戻すように結論が出たが、娘に毎日あびるの悪口を言って、刷り込みを頑張ってるかもしれない」などと、才賀に否定的なコメントも多い。

 今回の告発で注目を集めた子どもの「連れ去り」だが、実はこうしたケースは少なくない。サイゾーウーマンでは、離婚前に夫が子どもを連れ去り、親権を争うもそのまま会えなくなった女性や、〜〜〜の女性などにインタビューを行っていた。全十回の連載「わが子から引き離された母たち」のうち、元夫の連れ去りを罪に問えなかったという女性を、この機会に再掲したい。



(初掲:2021年9月20日)

 『子どもを連れて、逃げました。』(晶文社)で、子どもを連れて夫と別れたシングルマザーの声を集めた西牟田靖が、子どもと会えなくなってしまった母親の声を聞くシリーズ「わが子から引き離された母たち」。

 おなかを痛めて産んだわが子と生き別れになる――という目に遭った女性たちがいる。離婚後、親権を得る女性が9割となった現代においてもだ。離婚件数が多くなり、むしろ増えているのかもしれない。わずかな再会のとき、母親たちは何を思うのか? そもそもなぜ別れたのか? わが子と再会できているのか? 何を望みにして生きているのか?

第5回 キャサリン・ヘンダーソンさんの話(後編)

▼前編はこちら


「『あなた犯罪者じゃないのに、なぜ2年間も子どもたちに会えないの?』と、私の国の友人たちから言われます」

 そう嘆くのは、高校生の娘と中学生の息子、2人の子どもを持つ、キャサリン・ヘンダーソンさん。彼女の祖国、オーストラリアでは共同親権、共同養育が当たり前、別れた後に子どもに会えなくなる母親は約1%にすぎないという。

 彼女はなぜ、遠い日本の地で、わが子と生き別れになってしまったのか――。後編では、生き別れになってしまうまでのことを聞く。

子どもに会えなくなるなんて、思ってもみなかった

――日本には戻ったんですか?

 もちろん。私は学校で働いていて、生徒たちに対する責任がありますから。そのまま子どもとオーストラリアに住むことは考えませんでした。もしオーストラリアでそれをやると、アブダクション(誘拐)と見なされて罰せられます。でも今思えば、弁護士事務所に行くことを彼に予告してしまったのは、失敗でした。

――なぜ予告したんですか?

 離婚する気はなかったし、嘘はつきたくなかった。それに「隠すべきではないな」って思ったんです。そもそも私、離婚しない方法を考えるために、弁護士事務所に行くつもりでしたし。でも彼は、私の予告を宣戦布告と捉えたんでしょう。このままだと、キャサリンに子どもを連れていかれてしまうと。

子どもを連れて、逃げました。