東山紀之『刑事7人』ほか、7月期は“刑事ドラマ”多数! 元刑事に聞く「ベスト/ワースト」作品
――最後に、あらためて北芝さんの「刑事ドラマのベスト3」と「ワースト3」をまとめてもらえますか?
北芝 ベスト3は『古畑任三郎』『相棒』『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』(シーズン3と4)ですね。
『古畑任三郎』のような色男の刑事って、現実にも結構いるんですよ。『相棒』の良いところは、実際は捜査をしないキャリアが主役でも、相棒の存在を生かしたストーリー展開で、リアリティを生もうとしているところですかね。『絶対零度』は、主人公に公安出身者を据えたことで、これからの刑事ドラマのエポックメーキングになり得る作品だと評価します。
一方で、ワースト3ですが……『SPEC』『BOSS』『太陽にほえろ!』です。
『SPEC』と『BOSS』は設定自体に難あり。『SPEC』当麻の「IQ201」という設定には、刑事仲間も反感を持ってましたね(笑)。『BOSS』は『相棒』とは違い、大澤のキャリアとしての扱いや描写に無理がありました。面白いけど、刑事たちがバカにしたのが『太陽にほえろ!』です。「あんなのないよ」と(笑)。エピソードにリアリティがありませんでした。刑事が死にすぎだし、腹を撃たれて立ち上がって「なんじゃこりゃ!」なんて言わないですよ。腹撃たれて、動脈が切断されたらしゃべれません。どんなに頑張っても4秒で倒れます。細かいところですが、しっかり考証してほしかったですね。
北芝健(きたしば・けん)
早稲田大学卒業後、商社に勤務するも一念発起して警視庁入庁し、交番勤務の後、私服刑事となる。一方で鑑識技能検定にもパスし、警視庁の語学課程で優等賞をもらい、公安警察に転属したが、巡査部長昇任試験を拒否し、巡査のまま退職。ロス市警の捜査に協力したことから、アジア特別捜査隊と懇意になり、犯罪捜査をネイティブの英語で伝える語学力を身につける。現在は現場捜査の経験を生かし、複数の学校の講師として犯罪学を教える。プロファイリングの第一人者としてテレビのコメンテーターなどで活躍。『警視庁 強行犯捜査官』(さくら舎)、『迷宮探訪 時効なき未解決事件のプロファイリング』(双葉社)など著書多数。
※2020年12月6日初出の記事に追記、編集を加えています。