『ザ・ノンフィクション』「やりたいことで生きていく」という機運の弊害「都会を捨てた若者たち 後編 ~27歳の決断~」
大地は「(いろんな人とうまくやれ、かつカフェといういろんな人が来る環境を作りたい樹乃香に対し)僕はいろんな人が来るとしんどいから」 と、退去後に樹乃香と生活を共にすることに消極的だった。
大地の自己認識は「人付き合いがしんどい」ようだが、しかし、前後編を見る限り、大地はむしろ人付き合いに積極的な人のように見えた。番組スタッフの前でもおしゃべりだ。
樹乃香と付き合ったなれそめを聞かれた際、「褒め上手だから」と話し、藤村氏に山の開拓を提案されると気を良くしたり、逆に藤村氏にたしなめられたときは退去を検討するほど落ち込むなど、大地は人から言われたことに影響を受けやすい。
本当に人付き合いが苦手なら、人の話に耳を傾けたりなど人と関わろうとしないし、彼女をつくろうとも思わないだろう。そもそも大地は新卒で大手ハウスメーカーの営業マンだったが、大手の人事が採用、配属する人に「人付き合いが苦手な人」はいないはずだ。
大地は、「人付き合いが苦手」というほどではなく、「人に対し愛想よく振る舞うこともできるし、気の合う人とは仲良くしたいが、人付き合いの煩わしさはなるべく避けたい」程度に見える。それなら私もそうだし、世の中の多数派とすら言っていい。
「ぱっと見そうかもしれないが、本当の自分はそうではない」という考えもあるかもしれないが、「ぱっと見そう映る」というのも、その人の立派な実態のひとつだ。ぱっと見は人付き合いに積極的に見える大地は、自然を相手に開拓生活をするよりも、接客のほうが向いているように見えたし、その点でもカフェ経営はいい進路だと思う。
次週の『ザ・ノンフィクション』は「人力車に魅せられて ~夢と涙の浅草物語~」。浅草観光の名物ともいえる人力車。10社以上がしのぎを削る中で「東京力車」は女性俥夫も多く活躍している。俥夫を目指す若者たちを見つめる。