「母親が専業主婦」は中学受験に有利!? 息子が塾で“クラス落ち”、仕事を辞めた母の思い
そんな中、美保さんは日頃の仕事ぶりが認められたらしく、職場でSV(スーパーバイザー)という役職への昇進の打診があったそうだ。
雇用形態は、パートから契約社員に。待遇面では、賞与はないものの、役職手当として時給が200円プラスと提示され、さらに、将来的には正社員への登用もあるという話だったという。
「コールセンターの仕事は好きでしたし、同僚との関係も良かったので、職場環境に不満はなかったんです。哲也が受験生でなく、さらに休校になっていなかったら、有難く受けたかもしれません……」
悩んだ揚げ句、美保さんはその話を辞退したどころか、退職の道を選んだそうだ。
「今じゃないなって思ったんです。SVになるのも、仕事を続けるのも。SVになるなら、時短勤務はできなくなるので、哲也のそばにいる時間は、ますますなくなってしまう。これで哲也の未来の可能性が狭まってしまうことだけは避けたいと思いました」
そして、美保さんは、最終学年となる6年生の1年間、哲也君のサポートをすることに全力を尽くしたという。
「哲也はもともと甘えん坊のせいか、やはり母親が家にいるということが単純にうれしかったみたいです。私も、疲労度が全然違ったのか、気持ちに余裕ができたみたいで、矢継ぎ早に口うるさく言うことが少なくなりました。哲也には、それが本当に良かったようで、机に座って、集中している時間が増えた気がします。成績も、6年の晩夏までは悲惨だったんですが、冬の気配を感じたあたりから、これぞⅤ字回復ってくらい伸びていきました」
その甲斐あってか、哲也君は今年、見事に第1志望校である難関校に進学。部活や行事も含め、コロナ禍以前と同じような学園生活を謳歌しているという。そして最近、美保さんは元の職場に復帰したという。