コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

「母親が専業主婦」は中学受験に有利!? 息子が塾で“クラス落ち”、仕事を辞めた母の思い

2022/06/26 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 最近はジェンダーレスの時代だと言われているものの、こと「子育て」をめぐる日常のアレコレは、残念ながら、いまだに「母親の仕事」となることが多いものだ。

 中学受験もその例外ではない。塾の送り迎え、塾のお弁当作り、プリントの整理、家庭学習計画の立案、その進捗管理などなど、主に母親が中学受験のアシスタントプロデューサー的な役割を務めているのが現実だろう。

 その負担ゆえに、中学受験を考えている、あるいは実際に足を踏み入れている母の中には「仕事との両立」に悩む人が後を絶たない。

 中学1年生の哲也君(仮名)の母・美保さん(仮名)もその一人であった。

 専業主婦だった美保さんは、一人息子である哲也君の小学校入学のタイミングで、コールセンターのパート従業員として社会復帰を果たしたという。午前9時~午後4時の週3のパートは、やりがいもあり、楽しかったそうだ。

「パートでしたけど、社会とつながっているという実感がうれしかったですね。それに、哲也が4年生になった時、同級生の影響で『中学受験の塾に通いたい!』と言い出したんですが、即答で『OK!』って返事ができたことも、素直にうれしかった。私の稼ぎで我が家の家計に余裕ができたから言えたことなので、そこはちょっと誇らしかったです」

 しかし、一昨年、美保さんは悩みに悩んで、仕事を辞めた。

「人手不足というのもあり、哲也が5年生になる頃には、週3のパートが週5まで増えていました。そうなると、やっぱり私も疲れが溜まってきて、中学受験のために親がやったほうがいいことも杜撰になっている気がしていたんですよね……」

 美保さんのママ友たちは専業主婦の人が多かったという。彼女の目には「上位クラスにいる子の母親は専業主婦」と映っていたそうだ。

「当時は、自分に余裕がなくて、『哲也の成績が上がらないのは私のせい?』ってくらい追い詰められていたように思います」

 さらに、コロナ禍が美保さんに追い打ちをかけたそうだ。

「小学校が休校になってしまい、哲也を残して出社するはめになりました。ウチの会社はまだ在宅でのテレワークにはなっていなかったんです。当然、見張りがいない哲也は自主的に受験勉強をするわけもなく、成績が下降し、ついにクラス落ち。一方で、ライバルだと思っていた専業主婦のママ友の子はクラスアップに成功。やっぱり母親が専業主婦というのは、中学受験に有利なのは当たっていると焦りました」

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