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『ザ・ノンフィクション』レビュー
『ザ・ノンフィクション』お父さんみたいにならないで、という母親の呪い「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」
2022/06/21 11:16
夫婦間で矛盾したメッセージを子どもに発信しているのが問題なのではない。たとえ矛盾していても、大地の前で両親それぞれが、自分たちは仕事についてこう思っているがその上で大地は自分で考えればいい、と言えばむしろそれは非常に有意義な家族の時間になると思う。
大地の家の場合、母は父への不満を本人には直接言えず、代わりに大地に「お父さんのようにならないで」と告げ、父は父で大地に仕事を継いでほしいと言えないし、妻がそこまで自分に対し不満を持っていたことに気づけない。
意見の矛盾が問題なのではなく、言いたいことを直接当事者に言えない、相手の不満に気づけないというコミュニケーション不足が問題のように思う。
大地の父母は大地のYouTubeをチェックし、行く末を案じているし、大地の父は非電化工房の稲刈りを手伝いに来ている。夫婦仲、家族仲は悪くないように見えるのだが、肝心な点においては「コミュニケーションを避けている」感じがした。
ぱっと見の仲はいいのだが、言えば軋轢が起きそうなこと、気まずくなりそうなこと、しかしだからこそ大切なことはどうも話せない——と言う家庭は、大地の家に限らないように思う。「話し合い」が苦手で「察してほしい」という風潮が根強い日本では、むしろこういう家庭のほうが多いのではないだろうか。面倒なことにふたをしたい気持ちはわかるが、ふたをすることで生まれる弊害もある。
来週は今週の続編。残り半年を切った非電化工房での弟子生活。27歳のカップルが出した結論とは。
最終更新:2022/06/22 12:32