芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』お父さんみたいにならないで、という母親の呪い「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」

2022/06/21 11:16
石徹白未亜(ライター)
写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月19日の放送は「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」。

あらすじ

 栃木県那須町にある非電化工房では自然と調和した暮らしを目指し、自分の力で生きていく技術を学ぶ。代表の藤村靖之氏は1年限定で住み込みの弟子を取っており、現在は20代の5人が弟子として暮らしている。夜は昼の間ソーラー充電で得たわずかな明かりのみだ。

 弟子の一人、27歳の大地は非電化工房の同期の他のメンバーとの交流を避け、夕食も別に取る。だが「人嫌い」「人が苦手」という感じではなく、スタッフとはむしろ人当りよく話し、非電化工房の同期たちが誘ってくれるのを待っているような節も感じさせる。

 そんな大地を番組ナレーションは「相当こじらせているようです」と伝えていた。大地はYouTubeで非電化工房での暮らしを配信していて、そこで欲しいものリストも掲載しており、その中には「彼女」の文字もある。

 大地は4歳で野球を始め、野球の強豪高校に進むも甲子園出場の夢はかなわず、大学ではアメフトへ転身するも、結局レギュラーになれなかったという。その後、東証一部上場のハウスメーカーに就職し営業マンとして働くも1年ほどで退職。人材ベンチャーに転職するも、自分に自信をなくしてしまい、メンタルクリニックで「うつ症状」と言われ退職する。

 大地は幼いころから競争生活を過ごしてきたものの、何も手にしていないことから非電化工房への弟子入りを決めたと話すが、非電化工房での目的がはっきりあるわけではないようだ。そんな大地に対し、藤村氏は山への開拓を一例として出し、大地は乗り気になっていく。

 そんな大地に彼女ができる。非電化工房で暮らす同い年の樹乃香だ。樹乃香は大学で人権、環境問題を学び、生活支援のNPOで働くも、毎朝の満員電車の生活に慣れなかったようで、弟子入り生活をしながら非電化カフェの開業を目指している。

 そのような中で大地の父親が非電化工房を訪ね、稲刈りに参加する。大地は樹乃香を父親に紹介。その後、居酒屋で父と息子は和やかに話すが、父親は大地が席を立った際に、番組スタッフを前に、自分の仕事を手伝ってほしいことや、彼女ができたのに好き勝手やっていていいのか、という気持ちを吐露する。

『ザ・ノンフィクション』番組最後に大地が見せた変化

 番組最後2分、午後2時50分すぎからが怒濤の展開だったように思う。

 それまでの番組中の大地は目の前の非電化工房の同期とは自分から打ち解けようとしないが、それは孤高を貫くというよりは「誘われ待ち」な感じで、さらに人付き合いは苦手と言いつつYouTubeという人付き合いには積極的だ。

 さらには非電化工房に身を置きながらも、やりたいことがはっきりあるわけでもなく、さらに彼女は欲しいしと、どうも浮ついた感じに見えた。

 しかし番組最後、大地が父親と居酒屋で飲みながら話した内容には実感がこもっていた。抜粋したい。

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