海外
鎮痛剤に依存性がある恐怖

死者50万人、アメリカにまん延する鎮痛剤中毒――オピオイド依存に苦しんだセレブ5人

2022/06/10 20:23
堀川樹里(ライター)

 アメリカで危機的な社会問題となっている麻薬性鎮痛剤オピオイド中毒のまん延。オピオイド系鎮痛剤の中でも「オキシコンチン」は依存性が極めて高く、過去20年間で全米で50万人以上の死者を出し、大きな社会問題にもなっている。



 20年10月、オピオイド中毒を拡大したとして集団訴訟を起こされていた米製薬大手パーデュー・ファーマが有罪を認め、米司法省と83億ドル(約1兆1,151億円)の和解案に合意したと発表した。しかし、依存者の数は増え続けており、昨年は8万人を超える人がオピオイド中毒で亡くなっている。


 先日、エアロスミスのスティーヴン・タイラーが、足の手術をした際に処方された鎮痛剤によって、克服していた薬物依存症を再発。リハビリ治療を受けるため、ラスベガスの定期公演をキャンセルすると発表した。鎮痛剤依存は、セレブの間でも深刻な問題となっているのだ。



 今回は、鎮痛剤に依存してしまいそれを克服したセレブを5人、紹介する。

ウィノナ・ライダー(50)
、鎮痛薬オキシコドン依存に

万引き発覚から薬物依存があらわになったウィノナ・ライダー(写真/Getty Imagesより)

 子役として活躍した後、女優として大ブレーク。20代前半でアカデミー賞にも2度ノミネートされ、私生活でもジョニー・デップやマット・デイモンと交際するなど90年代のハリウッドには欠かせない存在だったウィノナ。彼女がトップスターの座から転落したのは01年12月。高級デパートで万引きする一部始終をとらえた防犯カメラ映像が公開されたのがきっかけだった。



 万引きで現行犯逮捕されたウィノナは、処方された8つの異なる薬を所持していた。処方薬で違法薬物ではないことから薬物所持の罪には問われなかったが、「鎮痛剤を必要としていた過去があるようだが、彼女の名前以外で処方された薬もあり、鎮痛剤依存症である」と見なされた。



 万引き事件の2カ月前、ウィノナは腕を骨折し、鎮痛薬のオキシコドンを処方された。後に雑誌「Vogue」のインタビューで、「最初は、痛みを和らげるために薬を飲んでいた。でもそのうち、痛みがあるかどうかわからないけど、とりあえず服用するという具合になって」と回想しているように、あっという間にオキシコドン依存に陥った。

 逮捕された時には、鎮痛剤を手に入れるため、20人の医師から37通もの処方箋をもらうという「ドクター・ショッピング」のジャンキーになっていた。



 この万引き事件の1カ月ほど前、カリフォルニア州医事局は、患者の求めるままに鎮痛剤を処方する医師の調査を開始。顧客リストにウィノナの名もあったことが判明している。アメリカでは、こうした医師の存在も大きな問題となっている。



 ウィノナは、「Vogue」のインタビューに対して「鎮痛剤を服用したことある? (ハイになって)むちゃくちゃになるわけじゃないの。頭がぼーっとして、ただただ混乱状態になるの」と説明しており、薬の副作用で訳がわからないまま万引きをしてしまったとしている。



 この事件がきっかけで鎮痛剤に依存していることを自覚した彼女は、すぐにハビリ治療を受け、薬の服用をやめた。その後も家族の支えを得てクリーンな状態を保ち続け、16年にNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で女優としてカムバックを果たした。

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