サイゾーウーマンコラム家計簿に書かれていた義母の本心 コラム 老いゆく親と、どう向き合う? いつも明るく笑っていた義母だったが……家計簿に書かれていた“本心” 2022/06/05 18:00 坂口鈴香(ライター) 老いゆく親と、どう向き合う? 義母を苦しめた義父の世話はしようと思えない ところが、義母の回復が絶望視され、義母がこれまでの義母ではなくなると、そのことを受け止められないのか、夫に不穏な様子が見られるようになった。 「夫も、義母が死に向かっているのがつらいんだとは思います。以前のような暴言を発することはありませんが、ちょっとしたことで気分を害するようになりました。義母のことで悲しい思いをしているのは私も同じなのに、夫の態度でよりつらくなるし、不安が大きくなるんです。これまでなら義母に相談できていたのに、それももうかないません。義母がいなくなったら、この先どうなってしまうのか」 義母を苦しめていた義父に対する気持ちも複雑だ。義父は昔の人なので、自分のしたことを反省することはないだろうと諦めている。ただ、義母を苦しめた義父の世話をしようという気にはとてもならない。夫がやればよいと思う。 義母を不幸だと決めつけるのは間違いなんじゃないか 闇の中にいるようだったある日。つけっぱなしにしていたテレビから、つらい思いを抱えている人に向けた心理士のアドバイスが流れてきて、画面に見入った。それは、「ネガティブな気持ちがあふれそうになったときは、それらの気持ちを紙に書き出して客観的に見るとよい」というものだった。 「それを聞いて、ハッとしたんです。もしかすると、義母もそうやって自分の気持ちを家計簿に吐き出して、つらさを乗り越えようとしていたんじゃないだろうか……。義母はただつらかっただけではない。それを乗り越えようという強い気持ちがあったのではないか。私が義母を不幸だと決めつけるのは間違いなんじゃないかと思いました」 林田さんは、義母の強さの理由が理解できた気がした。義母の家計簿から、この難局を乗り越える勇気をもらった。 やっぱり義母にはかなわない――。そう思って、前を向こうと決めた。 前のページ12 坂口鈴香(ライター) 終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 記事一覧 最終更新:2022/06/05 18:00 楽天 クロワッサン特別編集 家計簿2022 家計簿アプリでは見つからない本心…… 関連記事 母がエンディングノートに書き残していた「望み」とは? 母親を看取った30代女性の胸中実家の将来は“安泰”と思っていたが……「おかしいなと思った」母の言動と、あっという間に崩れた生活「震えた字で『父ちゃんのバカ』って」――母は晩年、夫が浮気相手と一緒にいるという「幻覚」を見ていた「自傷行為をするようになった母」父が亡くなって12年、積み重なる違和感は「年を取ったから」だと考えていた息子認知症の父は「まったく怒らず、子どものよう」だと語る娘……「ムカつくけど一緒に過ごす」と決めた思い 次の記事 「フリマアラート」のメリットとデメリット >