ジャニーズドラマにおける、堂本剛『金田一少年の事件簿』という記念碑――なにわ男子・大西流星『夢中さ、きみに。』に見る新時代
堤や宮藤と並走してきたジャニーズアイドルが、40代に入り、立ち位置が変わりつつある中、現在のジャニーズ事務所の課題は、10代20代の若いジャニーズアイドルたちに活躍の場を用意し、世代交代を果たすことだったが、その試みは少しずつ成果を見せ始めている。
たとえば『俺の家の話』と同じ冬クールにMBSのドラマ特区で放送された深夜ドラマ『夢中さ、きみに。』は、関西ジャニーズJr.内ユニット・なにわ男子に所属する大西流星が出演し、鮮烈な印象を残した。
本作は新進気鋭の漫画家として注目される和山やまの同名漫画(KADOKAWA)をドラマ化した青春ドラマで、大西が演じた林美良は不思議な魅力を持った天使のような少年だ。林と女子生徒の松屋めぐみ(福本莉子)の関係は、男女の恋愛というよりは、推し(アイドル)とオタク(ファン)の関係にように見えた。
芥川賞を受賞した宇佐見りんの小説『推し、燃ゆ』(河出書房新社)を筆頭にアイドルとファンの関係を通して、新しい世界像を語ろうとする物語が近年増えているのだが、その時にジャニーズアイドルが重宝されることは間違いないだろう。
昨年は、ジャニーズJr.内グループ・HiHi Jetsに所属する高橋優斗が『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)、King&Princeの高橋海人が『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系)といったプライムタイムの連続ドラマに出演。5月から始まる連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK)には、同じくKing&Princeの永瀬廉が出演することが決まっている。
LDH等の新興勢力の台頭によって、ここ数年は存在感が薄かったジャニーズアイドルだったが、すでに若手の逆襲が始まっている。今後、彼らがかつての堤や宮藤のような新世代のクリエイターと組んでドラマを作ることができれば、ジャニーズアイドルの新時代が到来するはずだ。
(成馬零一)
※『テレビドラマクロニクル1990→2020』販売中。詳細・購入はこちら
※当記事は2021年4月19日初出の記事を再編集しています