福山雅治、『ガリレオ』シリーズ第3弾で話題! “二枚目”から“おじさん”まで演じる俳優としての成長
例えば、ミステリードラマ『ガリレオ』(フジテレビ系、2007年)の映画第一作となった『容疑者Xの献身』。人気ドラマの映画として本作が特殊だったのは、物語の中心は堤真一と松雪泰子という二人の男女が悲しい犯罪に手を染めてしまう悲劇であり、福山演じる主人公の物理学者・湯川は出番も少なく、見せ場がほとんどなかったことだ。
意地悪な見方をすると『容疑者Xの献身』は、福山の人気を表看板にして作り手が好き勝手やった結果、生まれた傑作だった。
こういう使われ方は、エゴが強い俳優だったら耐えられない。普通なら、もっと見せ場を作れとクレームを入れてもおかしくないだろう。しかし、福山は自分が看板になることで良い作品ができるなら「喜んで」と引き受けたのではないか。おそらく作品全体が良くなれば、自分が目立つかどうかは、どうでもいいのだろう。大河ドラマ『龍馬伝』(NHK、10年)も映画『そして父になる』(13年)も、福山の人気を担保にすることでクリエイターが力を発揮した傑作だが、こうした役割を受け入れる姿勢に男気を感じる作り手は少なくないだろう。
女優の吹石一恵と結婚した15年以降は、クールな二枚目路線は軌道修正されつつあり、ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系、16年)や映画『SCOOP!』(同)ではおじさん役を演じている。中でも、『SCOOP!』での写真週刊誌の中年カメラマン・都城静は、ラジオで見せる下ネタ好きで男臭い福山が反映されており、俳優・福山の最高傑作だといえる。
そして『集団左遷!!』の片岡支店長も、今まで演じてこなかったタイプの男だ。片山は頼りないが、どこか憎めないところがあり、ぎこちない仕草に人柄の良さがにじみ出ている。片岡支店長もまた、ラジオで見せる福山の人柄が反映された役だと言えよう。この等身大路線は、俳優・福山の新境地となるのではないかと思う。
(成馬零一)
※2019年5月20日初出の記事に追記、編集を加えています。