13年ぶりに息子と再会、手を握ると「やめてください」と拒絶され……子どもと生き別れた女性が今願うこと
――5歳以来の再会ですよね。触れ合ったり、抱き合ったりはしなかったんですか?
できたらいいなって思いましたよ。それで実際、私が手を握って「大きくなったね」と頭をなでようとしたら「やめてください」と真顔で嫌がられました。
――それはつらい。
5歳のときのかわいさはまったくなくて。背が高くなり、だらしない調子で太ってて。しかもファッションもダサい感じ。正直さえないなーって思いつつも、そこは実の息子だから、会ったときはうるうるしてたわけですよ。でも「お金は用意しましたか」と言ったり、「やめてください」と拒絶されて悲しくなりました。
「一緒に写真撮ろうか」と言って「裁判所がいいならOK」と言われたのですが、裁判所の調査官に「ダメだ」と言われました。最後には「今まで父さんとおばあちゃんに育ててもらったんだから、これからは恩返ししないとね」と伝えました。
それで再会が終わったんですけど、お互いの控室が隣同士で、壁越しにBの怒鳴り声とか何かを殴っている音が聞こえてきたんです。Bが感情に任せて暴れてるんだということは直感しました。30分以上ずっとその音が聞こえていました。息子が私からお金を取れなかったことに、怒り狂っていたんでしょうね。昔のことを思い出して恐怖で体が震えました。息子がそんな父親の元で暮らしてきたのかと思うと、かわいそうで仕方がなかった。でも、もう時間がたちすぎてしまいました……。
――とすると、その後、息子さんとは?
一切会っていません。大学も結局行かなかったようです。連絡先を渡しているので、もし何か望むことがあれば連絡してくるでしょうけど、何もありません。私のほうから望むことも特にないです。
18歳の息子に会ってわかったんです。私がそれまでずっと会いたかったのは、5歳のときの、あのかわいい子どもだったんだと。5歳から18歳までの成長が見られなかったこと、一緒の時間を過ごせなかったことは本当に残念です。死ぬまでずっと、その気持ちは残ったままでしょう。
私は別れたときに思ったんですよ。「Bら父子よりも、私はずっと幸せに生きてやる」って。だから、お互い楽しく生きればいいと思います。息子には好きに生きてほしい。私は私で楽しく生きてやるからって。
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そんな彼女は、同じような境遇の別居親に会って相談にのったり、結婚する前のようにフェスを見に行ったりして人生を謳歌している。コロナ禍になって活動を少しセーブしているようだが、コロナ禍が終わればまた、精いっぱい人生を楽しむつもりなのだという。
(西牟田靖)