高橋ユキ【悪女の履歴書】

49歳主婦、借金1000万円で一家夜逃げの先で……パート仲間をつなげた「サラ金」【群馬・独居老人殺人事件:前編】

2021/12/24 17:00
高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

金を貸していたご近所さんは「アレは演技ですよ」

 しかし、桐生市内の商店主はこれをテレビのニュースで見ながら言った。

「あぁ、またやっているよ」

 この商店主は、事件の4年前まで近所に住んでいたミツに金を貸して、踏み倒されているのだ。

「アレは演技ですよ。とにかく、口はうまいし愛想はいいし、あの芝居にウッカリ乗せられたらたいへんだよ。刑事さんだってだまされかねないね」

 あきれかえるように続けた。こと借金をするにあたって、ミツは天賦の才を備えていたという。


「まず、小金をためていそうなひとり暮らしのお年寄りに近づくんだ。そして、買い物や洗濯をしてあげて親しくなる。それからさりげなく借金を頼むんだが、最初の1、2回目はちゃんと返すんだね。それも、両手をそろえて頭を畳にすりつけて涙を流しながら『どうもありがとうございました』とやるんだよ。これには貸したほうもいたく感激しちゃう。それで、次も貸しちゃうんだけど、これが一番金額が大きくて結局、返ってこないんだよ」

 こうして踏み倒された金額は人それぞれだったというが、大方が2,000〜3,000円から、3〜4万円ほど。一件あたりの金額はさほど大きくないものの、近所を総なめにしているだけに、チリも積もれば大金になる。

つけびの村