高橋ユキ【悪女の履歴書】

49歳主婦、借金1000万円で一家夜逃げの先で……パート仲間をつなげた「サラ金」【群馬・独居老人殺人事件:前編】

2021/12/24 17:00
高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

借金1000万円を抱え、静岡に夜逃げ

 栃木県生まれのミツは中学を卒業して桐生市の工場に就職。ここで知り合った男と結婚し、ほどなくして子どもが産まれ母親となる。「如才なくて交際上手、子ども好き」な女性だったといわれるが、鉄工所や食料品店などにパート勤めするようになってから、生活ぶりが変わった。

 まず服装が派手になり、パチンコ屋に出入りするようになる。娘の成人式には分不相応な晴れ着を購入。そのうえ「自分で働いて自分で返せる」と、夫に内緒で知人からも金を借りまくった。先の商店主も、そのひとりだろう。

 さらにはサラ金にも手を出す。ところが、ついにこれに気づいた夫から、ミツは離婚を言い渡されてしまったのだ。

 夫は娘を連れ、家を出て行ったが、ミツはすぐにタクシー運転手の男と再婚する。この男にも2人の子どもがおり、そしてミツと同じように借金があった。「彼女に借金があることを承知の上」での再婚だったというが、雪だるま式に増え続ける借金は、事件を起こす83年の2月には群馬県内のサラ金業者39社500万円に上り、知人や他県のサラ金からの借り入れも含めると、約1000万円にもなっていた。

 激しい取り立てに、夫の子どもを、夫の前妻の実家に預け、夫婦2人で静岡県三島市に夜逃げする。偽名で家を借り、ゼロからの再出発を果たす準備を静かに整えた。


つけびの村