中学受験、心配症の母親が塾でブッ倒れ……この季節の“あるある話”に塾の対応は?
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
2月の東京・神奈川の中学受験本番まで残り100日を切った。ということは1月受験である他県の中学受験生も含め、すべての中学受験家庭に焦りが見える時期が到来したということになる。この晩秋から初冬にかけては、そのプレッシャーで押しつぶされそうになるお母さんが続出する季節でもあるので、注意が必要だ。
啓代さん(仮名)は自ら「心配性なんです、私」と訴えるほどに繊細な人である。一昨年の今頃の話。小6の息子である大輔くん(仮名)を塾にお迎えに行った啓代さんは、校舎内に大きく貼られた掲示を見て、言いようもない不安感に襲われたのだそうだ。掲示板には、墨文字でこう書かれてあったという。
「受験本番まで、あと87日!」
その直前、啓代さんがお迎えの母親同士の会話を聞くともなしに聞いていると、過去問の話をしているご様子。
「そうね……。お兄ちゃんの時は過去10年分をやりこんだから……」
「そうなのね、やっぱり10年? うちはまだ、3年分くらいしかできてないな……」
啓代さん自身には中学受験の経験はなく、大輔くんは一人っ子。何もかもが手探りなのであるが、人見知りな性格も加わり、ママ友と呼べる人もいない“孤独の戦い”だったそうだ。
啓代さんは「え、もう3年分? 3年分は終わったってこと? ウチはまだ1年分だけ……。え、待って。10年分やらないといけないって、どのくらいかかるの? もう、絶対、間に合わないじゃない!?」という焦りを感じた時に、目に飛び込んできた文字が「あと87日」。大輔くんは国語・算数・理科・社会という4科目で受験するので、1科目50分だとして、過去問1年分で200分。10年分で33時間超。それを第3志望校までやるとしたら……?
塾も学校もあるのに、どうやって時間を作るのかを考えただけで、啓代さんは顔面蒼白。それからの記憶がおぼろげだと言う啓代さんであるが、それもそのはず、なんと啓代さんはそこで貧血のような症状を起こして、倒れてしまったというのだ。そして、気が付いた時には、事務室内のソファーに寝かされていたという顛末。
「もう、本当に恥ずかしかったです。手当てしてくださった先生にも申し訳ないですし、何より、大輔に心配をかけてしまって……」