『二月の勝者-絶対合格の教室-』レビュー

ドラマ『二月の勝者』、金で「不可能を可能にする」のは受験だけではない【最強最悪の中学受験塾講師!痛快人生攻略ドラマが始まる!】

2021/10/19 19:04
桜田モモ (ライター)
『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系)公式サイトより

 中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系/土曜午後10時~)の放送が10月16日にスタートした。原作は、2017年12月から「週刊ビックコミックスピリッツ」(小学館)で大ヒット連載中の同名漫画。

あらすじ

 第1話(サブタイトル「最強最悪の中学受験塾講師!痛快人生攻略ドラマが始まる!」)では、中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」の新校長に、スーパー塾講師の黒木蔵人(柳楽優弥)が赴任する。黒木は大手中学受験塾「ルトワック」から、合格実績の振るわない桜花を立て直すべく迎えられたのだ。

 保護者や新6年生の生徒たちに「全員を第一志望校に合格させる」と高らかに宣言する黒木。その一方で、桜花の塾講師たちには「合格のために最も必要なものは、父親の経済力と母親の狂気」であり、生徒の親は「スポンサー」「金脈」「金のなる木」「ATM」、塾は教育者ではなく「サービス業」「子どもの将来を売る場所」と言い切る。

 6年生からの入塾を考えるサッカー少年の三浦佑星(佐野祐徠)は、学校の成績はクラスで一番だが、桜花のオープンテストの結果は偏差値40の最下位。というのも、「中学受験模試の偏差値」は、首都圏の6年生の約2割にあたる中学受験生のみで算出される。

 その多くが4年生から塾に通い、5年生までに6年間のカリキュラムを終えた成績上位者。そういった子たちに混ざって受けたテストで偏差値40(一般の偏差値60に相当)が取れた佑星は、むしろ6年生全体の中では優秀なほうなのだ。


 とはいえ、中学受験とサッカーの両立は厳しい。サッカークラブのコーチを務める佑星の父は、小6の伸び盛りでサッカーを中断するのはもったいない、偏差値40ならサッカーを続けたほうが可能性があると中学受験に反対する。

 そんな父親に対して、佑星のサッカーの実力を「平凡」と評し、「凡人こそ中学受験すべき」と力説する黒木。サッカー人口から考えてプロになれる確率は0.1%もないが、中学受験で名門私立に入れる確率は10%。勉強はスポーツや芸術よりも努力のリターンが得られやすく、中学受験で受かれば15歳の「伸び盛り」にサッカーを中断しなくてよい、大学付属なら18歳での中断もなし、と説く。

 結果、佑星の父は「サッカーも勉強もやるのは本人」と考えを改め、佑星は正式に入塾した。実際にやるのは子ども。けれどお金を出すのは親。それも、多くは父親。そのことを見据え、黒木は佑星の父、つまり「ATM」を揺さぶったのだ。

 実は黒木は、オープンテストを受けた佑星に「解こうと粘ったのがよくわかる答案です。スポーツか何か長い期間取り組んできたものがあるでしょう。粘って頑張った経験のある人は受験でも強いですよ」と激励していた。

 佑星にかけた言葉も、黒木にとっては「新規顧客」を獲得し、父親という「ATM」から金を引き出す手段のようだ。それでも、期待をかけてくる父親の顔色をうかがいながら長らくサッカーに打ち込んできた、11歳の子どもである佑星にとって、自分個人に向けられた「自分のこれまで」を明確に肯定する言葉はうれしく、背中を押してくれるものとなった。


二月の勝者 -絶対合格の教室ー(13)