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[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』
韓国映画『アシュラ』、公開から5年で突如話題に!? 物語とそっくりの疑惑が浮上した、韓国政治のいま
2021/10/08 19:00
韓国現代史を振り返ってみると、その規模の大小はともかく、政経癒着はどの政権下でも存在していた。とりわけ、1940年代後半のイ・スンマンから90年代前半のノ・テウまでの独裁政権時代は、政経癒着の全盛期と言ってもいいほど「慣習化」していた。その中から、政経癒着の現実を最も象徴的に国民に知らしめた「チ・ガンホン人質事件」と「チョン・ギョンファン横領/脱税事件」を紹介しよう。ソウルオリンピック直後の88年に起きたこの2つの事件は一見何の関連もないように見えるが、実は強く結びついている。
88年10月8日、刑務所に護送中の囚人12人が拳銃を奪い、護送車から脱走した。ほとんどは間もなく捕まったが、チ・ガンホンを含めた4人は、一般市民の住宅に侵入して身を隠しながら逃げ続けていた。15日、侵入先の家族の1人が脱出して通報、警察が駆け付けると、チ・ガンホンらは残りの家族を人質にして立てこもったのである。警察をはじめ、囚人の家族らも総出で説得を続ける様子が全国に生中継され、韓国中がかたずをのみながらテレビにかじりついた。その間にチ・ガンホンは、逃走のための自動車とBee Geesの名曲「Holiday」の入ったカセットテープを要求し、警察に用意させた逃走用の車の確認をするため外に出た1人が取り押さえられると、仲間の2人は絶望して拳銃自殺を遂げ、事件は悲劇に向かって加速。
残りの銃弾数を見誤り、1人残されてしまったチ・ガンホンは、人質を連れて窓際に立ち、外に群がる警察や報道陣、周辺の住民たちに向かって「腐った世の中への不満」を叫ぶと、ガラスの破片で自らの首を刺し、同時に突撃してきた警察の銃に撃たれて絶命、こうして事件は終結した。