コラム
【連載】わが子から引き離された母たち

結婚15周年の記念日に離婚を切り出されたオーストラリア女性、日本人の夫とは家事の分担や仕事のことで行き違い、家庭内別居に

2021/09/19 18:00
西牟田靖

――彼が経営していたのは、何の会社なんですか?

 ワインの輸入販売、コンピューター関係の相談とか。業務内容はバラバラ。収益は上がっていなかった。確定申告は毎年行っていましたけどね。

――なぜそんなに、彼は新しいビジネスにこだわったんでしょうね?

 彼はそのときミッドライフクライシス(中年の危機)だったのかも。今までの人生は「自分の思い通りにいかなかった」と思い込んでしまった。だから、突然、新しいことを始めた。それが新しいビジネスだった――。私はそう解釈した。だとすれば、しばらく静かに待ってあげたら落ち着いていくと思った。

――彼は落ち着いた?

 いいえ。ますますひどくなった。例えば、一家で車でお出かけしたとき、靴を履かずに靴下のまま運転をしたり、それまで吸っていなかったタバコを41歳になってから吸い始めたりもした。ヘンでしょ?

――確かにヘンですね。それで、その後、関係はどうなったんですか?

 2年間、ずっと関係はよくなかった。彼は毎月、1週間大阪に出張していて、私や子どもたちに秘密で、若い女性と交際しているようでした。LINEのメッセージに証拠が残っていた。

――キャサリンさんの体調はどうでしたか?

 どんどん悪くなっていった。不眠症になってしまって、学校に働きに行っても保健室で寝かされることが普通になった。

――お子さんとの関係はどうだったんですか?

 私たちの親子関係は良いほうだったと思います。だからもし、平等に離婚の調停をしていたら、私が親権者となる可能性が高かった。日本人ではないけども日本語が話せる、学校の教師。日本に長く住んでいる。悪くない母親。すると、彼が子どもたちの親権を得るためには、連れ去りという選択しかなかった。

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