フワちゃんのタメ口に「NO」を突きつけた有吉弘行はすごい? “毒舌”でも人を傷つけず、批判されないやり方
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今週の有名人>
「毎日遅刻してるじゃないか」有吉弘行
『有吉の夏休み2021 密着77時間』(フジテレビ系、9月4日)
「若者がテレビを見ない」という話を聞いたことがある人は、結構多いのではないだろうか。
今年5月20日、NHK放送文化研究所が発表した「国民生活時間調査」によると、テレビを15分以上視聴した場合を「見た」としてカウントすると、平日1日の間にテレビを見た人は10〜15歳で56%、16〜19歳は47%、20代は51%だとされている。これは逆に考えると、若者の半数近くがテレビを見てないともいえるわけだが、ある若者はテレビを見ない理由を「同じような番組ばっかりで、面白くない」と言っていた。
視聴率を取れる番組は長く続く。しかし、そうなると、どうしてもテレビはマンネリ化してしまう。若者の指摘はもっともだが、同じ番組を長年見ている立場で言わせてもらうと、番組は一緒でも、出演者は時代の流れに沿って少しずつ芸風を変えてきているように思う。そこまで注目して見ると、面白さを感じるのではないだろうか。
2017年に米国の映画プロデューサーによるセクシャルハラスメントが明るみになり、世界的にセクハラや性暴力を許さないという機運が高まったことで、SNSを中心に「#MeToo運動」が起きた。日本でも、19年に相席スタート・山崎ケイ原作『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)が原作と同名でドラマ化されることになったが、ネット上での批判を受けて、放送前にドラマは『人生が楽しくなる幸せの法則』(日本テレビ系)と改題されている。女性の容姿などを一方的に評価することがセクハラに当たると感じる人が多かったということだろう。
また、同年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)では、ぺこぱが「誰も傷つけない漫才」を披露して3位に入賞、その後ブレークを果たした。男性女性を問わず、世間が「人を傷つけない」方向を求めるように変わっているのだとしたら、難しくなってくるのは、今までテレビが持て囃してきた“毒舌”というポジションの芸能人ではないだろうか。口が悪いように見せかけて、よく聞いてみると的を射たことを言っているところが彼らの芸のキモだと思うが、こういう芸風は今の時代だと、ハラスメントと誤解される可能性は否めない。かといって、テレビの出演者が全員、誰も傷つけない“いい人”だと、それはそれで盛り上がりに欠ける。
毒舌芸能人もさぞやりにくかろうと思うが、やっぱりテレビに出続ける人は違う。9月4日放送の『有吉の夏休み2021 密着77時間』(フジテレビ系)を見て、やり方次第では毒舌でも「人を傷つけない」ことは可能なのだと感じた。