サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー『ナイト・ヘッド』豊川&武田の 芸能 ドラマ俳優クロニクル 伝説のドラマ『NIGHT HEAD』に詰まった90年代前半の“空気感”――豊川悦司の「怒り」と武田真治の「弱さ」が、暗い輝きとなった 2021/08/15 14:00 成馬零一 ドラマレビュー成馬零一 2人の美しさの背後に「怒り」や「悲しみ」があった 『NIGHT HEAD』が放送されていた90年代前半は、今振り返っても奇妙な時代だった。まだまだ日本は豊かで明るかったが、昭和から平成に時代が移り、バブルも崩壊し、世紀末ということもあって、世の中が暗くなる兆候が次々と現れ始めていた。 そんな、暗い影が差し込みはじめた時代の気分をいち早く捉え、人間の心の闇を描いたドラマが『NIGHT HEAD』だったのだ。豊川も武田も、80年代のトレンディ俳優とは違う、独特の暗さを身にまとっていた。 豊川の場合は、それが怒りで感情が爆発した時に見せるドスの利いた迫力となって現れており、武田の場合は人の悪意に触れる度に心を病んでいく弱々しさへとつながっていた。 2人とも端正な顔立ちだったが、美しさの背後に「怒り」や「悲しみ」がにじみ出ていた。それはとても病んだものに見えたが、そうしたマイナスの感情をテレビドラマでここまであらわにできること自体に爽快感があった。 現在の武田は筋トレを売りにするマッチョなタレントとなり、豊川は偏屈なおじさんを演じる怪優になっている。不健康な怒りや弱さを全面に打ち出していた『NIGHT HEAD』の頃の面影は、もはや存在しない。そのことを寂しく感じる時もあるが、だからこそ当時の2人の芝居は、あの瞬間にしか成立しない暗い輝きとして、ドラマの中に刻印されているとも言える。 おそらく今回のリブートがアニメだったのは、霧原兄弟は当時の2人にしか演じられないと作り手が思っているからだろう。生涯に一度しか出会えない完璧なハマり役だったと、あらためて感じるのである。 (成馬零一) 前のページ123 最終更新:2021/08/15 14:00 Yahoo ナイトヘッド DVD BOX 繊細そうで弱々しかった真治がマッチョになるなんてね…… 関連記事 『金田一少年の事件簿』で始まり『俺の家の話』で終わった、ジャニーズドラマ“一つの時代”と『夢中さ、きみに。』に見る新時代ドラマ評論家が選出「2021年ブレークしそうな若手俳優」ベスト3! 松下洸平、岡田建史ランクインジャニーズ不在! ドラマ評論家が選出、「2020年ブレークしそうな若手俳優」ベスト3『ブラックペアン』嵐・二宮和也に拍手喝采、イラつかせる“チンピラ演技”の魅力とは『BG』俳優・木村拓哉が、中年男性の“弱さ”を演じられないいくつかの理由 次の記事 『TOKYO MER』第6話、初の“2ケタ割れ” >