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ドラマ俳優クロニクル

伝説のドラマ『NIGHT HEAD』に詰まった90年代前半の“空気感”――豊川悦司の「怒り」と武田真治の「弱さ」が、暗い輝きとなった

2021/08/15 14:00
成馬零一

 こんな怪しい深夜ドラマが隠れたヒット作となり、のちに映画化されたことに当時は驚いたが、人気の大半を占めていたのは謎に満ちた物語ではなく、霧原兄弟を演じた豊川悦司と武田真治が醸し出す色気だったのだと、今ならよくわかる。

 豊川と武田は90年代を代表する人気俳優だが『NIGHT HEAD』出演当時はまだ無名だった。

 豊川は、渡辺えり子(現・渡辺えり)が主宰する劇団3〇〇に所属していた俳優で、1989年に退団した後、中原俊監督の映画『12人の優しい日本人』(91年)などの作品に端役として出演。翌92年に主演ドラマ『NIGHT HEAD』で大きく注目され、95年に北川悦吏子脚本の恋愛ドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS系)の主演を務めたことで大ブレーク。「トヨエツ」という愛称で親しまれるようになり、アイドル的な人気を博すようになった。

 一方、89年に「第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテンスト」 のグランプリを受賞して芸能界入りした武田も駆け出しだったが、『NIGHT HEAD』と同時期に放送された「ボクたちのドラマシリーズ」第1作の『放課後』(フジテレビ系)に出演したことをきっかけに、若者向けドラマの常連となっていく。

 ひたすら暗鬱としたマニアックなドラマだった『NIGHT HEAD』に出演していた豊川と武田が、同作を機にあれよあれよと連続ドラマで主演を務める人気俳優に変わっていく姿に当時は戸惑ったが、今振り返ると、2人がまとっていた独自の雰囲気が、あの時代の気分をいち早く反映していたからこそ、一気に受け入れられたのだと思う。 

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