未成年“大量万引き”グループに警察官も激怒! 抵抗する少年、泣き叫ぶ少女……とんだ真夏の大冒険
冷静さを取り戻して、まるでスイッチが切り替わったようにおとなしくなった男たちに、改めて用件を告げます。
「このカゴに入っているもの全部、お金払っていないでしょう? 間違いないわよね?」
「うん。すんません」
すぐに認めてくれたので、出入口に横付けされたバイクを駐輪場に停めさせて事務所に向かおうとしたところ、屋根に赤灯をつけた覆面パトカ―が駐車場に入ってきました。状況を話すと、彼らに免許証を提示させた警察官は、その場で犯歴とバイクのナンバー照会を行います。照会中、もうひとりの警察官がスクーターのシート下を捜索すると、人数分の水着やビーチサンダルが値札のついたまま出てきたほか、真新しい練炭やミニガスコンロなど、盗品と思しき商品が見つかりました。
「なんだお前ら、キャンプにでも行くつもりか?」
「川でバーベキューしたかったから……」
所轄に送るにも複数台の車が必要なので、バックヤードにある従業員用の休憩室で待機しつつ、諸々の処理を進めます。報告書作成のため、身分確認を進めると、彼らは17歳から18歳。被害合計は、自店の被害だけで1万7千円ほどになりましたが、全員が1,000円程度ずつしか所持しておらず被害品を買い取ることはできません。すると、彼らの所持品検査をしていた厳しめの警察官が、出てきたタバコを片手に言いました。
「おまえら、タバコ持っていたらダメじゃんかよ。これ、没収な」
すかさずに店長が、顧客から苦情が来ている話を持ち出すと、警察官はものすごい形相で怒鳴りつけます。
「おまえら、ここの人たちに、どれだけ迷惑かけてんだよ。吐いた唾、あとで掃除しにこいよな。吸い殻も拾って帰れ。このバカたれが」
「いや、緊急事態宣言が発令されていますし、それは大丈夫です」
今後は、施設内に立ち入らない旨の誓約書を書かせたうえで被害申告する運びとなり、被疑者たちとは別便のパトカーで所轄警察署に向かいます。未成年者だからと、私より先に被疑者たちが帰宅する不条理に耐え、全ての手続きを終えたのは午後11時過ぎ。ようやくに解放の時を迎えて少年課の取調室を出ると、隣の取調室には、ひとり取り残されてガラウケ(身元引受人)を待つ少年の姿がありました。ニヤニヤした目で、品定めするように見られて、とても怖かったです。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)