「息子には英語に振り回されてほしくない」私立中の英語教育に期待した父子の“理想と現実”
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
現在の私立中高一貫校では、ネイティブスピーカーの教員から日常的に英語指導を受けられることや、海外研修、留学プログラム、さらには海外大学進学への積極的な取り組みなどはもはや「当たり前」になっている。「国際的に活躍できる人材の育成」がグローバル化していく日本には必須という認識のもと、各校が英語を筆頭とする外国語学習に力を入れているからだ。
その中でも「インターナショナルクラス」というような名称で運営されているコースを持つ学校では週9〜10時間の英語授業が実施されているが、一般的な「中学生になって初めて本格的に英語を勉強する」コースであっても週7~8時間の英語授業が展開されていることは、むしろ普通だ(公立中学は週4時間)。
会社員である信也さん(仮名)は大卒後、国内企業に入社し主に営業畑を歩いていた。それなりに出世も順調で、会社員生活には概ね満足していた信也さんであるが、ある日、突然、会社が外資の傘下になったことで「英語」に振り回されるようになったという。
「自分は英文科卒でもないですし、ましてや留学経験もない。どうにか“読み書き”には対応できるんですが、聞く・話すはいまだに本当に苦労しています。息子には、こんな思いはさせたくないと思い、当時6年生だった息子の志望校として、英語教育に強いという中高一貫校に照準を合わせました」
そして、信也さんは息子の翔くん(仮名)を英語教育に熱心なある中高一貫校に入学させた。その学校は、ターム(学期)留学や長期留学にも積極的な学校で、副担任にはネイティブスピーカーが就き、英語の授業以外でもさかんに英語が使われる学校生活という触れ込みに心が動いたという。
「最初は翔も『英話の授業が楽しい』と妻に報告していたみたいですが、すぐについていけなくなったのは誤算でしたね……」と信也さん。
その学校はグレード別授業を展開しているのだが、一番上のクラスは当然のことながら帰国子女や幼い頃から英語に慣れ親しんでいる子どもたちで構成されており、中学入学までほとんど英語に触れたことがない翔くんはスタンダードクラスに所属。そこでイチから丁寧に指導されていたという。
ところが、そのスタンダードクラスもフタを開けてみたら英検5級(中学初級程度)取得者が多く、4級取得者(中学中級程度)もチラホラといるようなレベルの高さだったそうだ。