“中学受験”に見る親と子の姿

「息子には英語に振り回されてほしくない」私立中の英語教育に期待した父子の“理想と現実”

2021/08/08 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

届かなかった“親の思い”、父としてできることは?

 結局、翔くんは英検3級を取得することができず、進学条件を満たすことができなかったのであるが、担任の先生のご尽力で、レポート提出などの裏技を駆使しながら、どうにか併設高校進学が認められたという。父親である信也さんは語る。

「学校の温情で高校には入れてもらいましたが、だからと言って成績が上がるわけもなく、高1になった今も英語は最下位に近い成績です。もう英検会場にも行きませんね……。はじめのうちは“親の心、子知らず”だなぁと思っていたんですが、考えてみたら、この学校を受けろって言ったのは私ですし、今、思えば、“親の思いは余計なお世話”だったってことですかね……。結局、勉強は英語であろうと何であろうと、自分で興味を持ってやろうと思わない限りはどうにもならないってことですよね……」

 信也さんは翔くんが自分から「これをやりたい」と言うまでは、何も言わずに見守ることにしたそうだ。

 中学受験は、子どもが幼い分、親の誘導によることが大きい受験になってしまうので、翔くんのような、親の“良かれ”が思い通りにならないというケースも珍しくない。信也さんの反省の弁を聞いているうちに、子育てというものは本当に難しいものだなあと改めて感じるところである。

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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最終更新:2021/08/10 19:58
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