コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

大ブレーク芸人・ヒコロヒーは“やさぐれキャラ”だけど……「売れても変わらない」を求める、真面目な“人間性”に思うコト

2021/08/06 14:30
仁科友里(ライター)

 「バレンタイン・キッス」(1986年)のレコードが30万枚売れたことで、周囲の扱いが変わり、天狗になっていったという国生。遅刻しても謝らない、ドラマ撮影なのにセリフは覚えていかない、ウエスタンブーツを履くための椅子を用意しなかったスタッフに向かってブーツを投げるなど、あの愛らしい笑顔からは想像もつかない天狗ぶりだったそうだ。こういう人とコンビを組むと仕事がスムーズに進まないし、ストレスが溜まることは想像に難くないが、一方で「売れても変わるな」というのも、なかなか難しい注文だと思う。なぜなら、人は変化する生き物だと思うからだ。

 人は環境によって作られる部分があるので、周囲が変われば物の見方や感じ方も変わってくるし、求めるものも違ってくるのではないか。学生時代の女友達が結婚や出産をすると、独身者とは話が合わなくなるという経験をした人は多いと思うが、まさにこれが典型。どちらが悪いというわけでもなく、環境が変われば興味も変わり、共通の話題が減るということだろう。

 ヒコロヒーも自分では気づかないだけで、ブレーク前と比べたら、変わっている部分はあるはずだ。彼女は『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)にて、4年連続で準決勝進出を果たしている。今ほどテレビに出ていない時代であれば「準決勝まで進んですごい!」と思えただろうが、今は売れているからこそ、なんらかの大会のタイトルを獲得して、さらに活躍したいと思うのが、芸人というものではないか。

 ヒコロヒーがさらなる高みを目指すなら、歴代の受賞者や先輩からアドバイスを受けて、精進する必要があるだろう。そうすると、おのずと興味の対象や、付き合う人も変わっていくと思う。昔の仲間からは「変わった」「売れたら付き合いが悪くなった」と言われるかもしれないが、そもそも、変わり続けなくては生き残れないのが芸能界、もしくはお笑いの世界なのではないだろうか。

 「売れて天狗になる」というのはみっともいいものではないが、「周囲の扱いが変わる」のは、人気がある時だけだ。国生はある日突然人気がなくなり、スタッフに対する態度が良くなかったこともあって、10年間、仕事が低迷して苦しんだと言っていた。結局、そういう態度は本人に返ってくると考えるなら、「売れても変わらない」ことより、「さらに売れるために変わる」ことが大事だと思うのだ。

 ひと昔前、女芸人は見た目やモテないネタで笑いを取っていたが、これは視聴者が女芸人を一段下に見ていた証拠といえるだろう。しかし、今や女芸人はバラエティー番組だけでなく、ドラマや文筆の世界にも活動の場を広げ、「国民の女友達」的な存在にシフトしてきたと感じる。

 こうなると、女芸人に求められるのは“人間性”ではないだろうか。「売れても変わらない」ことを良しとするヒコロヒーの真面目さ、潔癖さは女性ウケすると思うが、一歩間違うと「義理人情に縛られて小さくまとまってしまう」「他人からストレスをもらって、自分が疲れてしまう」可能性もあるだろう。生真面目や潔癖もほどほどに、さらに突き進んでいただきたいものだ。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2021/08/06 14:30
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