“妊婦万引き犯”に下した冷酷な鉄槌! 女店長は「そんな幸せな環境にいるのに、あなたぜいたくよ」と言い放った
「こんにちは。もうそろそろ産まれそうですね」
「ええ、どうも……」
この人誰だっけと、頭の中で記憶をたどっているであろう女は、いぶかしげに私の顔を凝視してきました。引きつり気味の微笑みで応えて、そっとトートバッグの紐を掴んだ私は、びくりと体を強張らせた女に用件を伝えます。
「お店の保安です。このバッグの中に、たくさん入れちゃったでしょう? ちゃんと払ってから帰ってもらえる?」
「え? ああ、はい……」
呆気にとられながらも同行に応じてくれたので、「大丈夫だから」となだめながら、建物の裏手にある事務所に向かいます。応接室のパイプ椅子に座らせ、トートバッグに隠したモノをテーブルの上に出してもらうと、先程覚えた商品のほか、カロリミットやグルコサミン、高機能マスクが出てきました。続いて身分確認を進めると、ヨガの講師だという女は、31歳。この店の近くに、旦那さんと2人で暮らしているそうで、健診帰りに立ち寄ったと話しています。
今回の被害は、計21点。合計で5万円ほど。すべて買い取れるか尋ねれば、10枚づつなのか束になった万券をテーブルの上に出して、すべて買い取るので許してくださいと懇願されました。
ひととおりの確認作業を終え、どことなくたんぽぽの川村エミコさんに似ている50代と思しき女性店長を呼び出して状況を説明すると、見覚えのある女だそうで、通報する前に事情を聴きたいと申されます。
「よく来てくれていますよね。いつもやっていたんですか?」
「いえ、いつもではないです……」
「お金、たくさんあるじゃない? どうして払わなかったの?」
「世の中コロナで大変なのに、妊娠しちゃって。子供が産まれたらお金かかるのに、全然仕事できていないし。そんなことを考えていたら、お金払うのが嫌になっちゃって……。ごめんなさい」
おそらくは、自分の胸の内を誰かに聞いてもらいたかったのでしょう。ため込んでいたものを吐き出すように告白した女は、顔を伏せて泣き始めました。そんなことにはまるで動じない女性店長が、この上なく冷酷な顔で言い放ちます。
「そんな幸せな環境にいるのに、あなたぜいたくよ。警察呼んできますね」