「神木隆之介はキラキラしすぎ」!? 爆死中の映画『100日間生きたワニ』を見たアニメライターが「小規模で見たかった」と語るワケ
誰もが知らないところで傷を負いながらも、何でもないふりをして生きている。「明るく笑っているからこいつは大丈夫」なんてことはないし、暗い顔をしているから優しくされる権利があるわけでもない。
それに気付いたネズミの働きかけで、ワニの死後から止まってしまっていたグループLINEが再び動き始め、またみんなで集まり、笑い合うという展開は、とても自然に受け入れられた。カエルがいてくれたおかげで、ワニの死から立ち止まったままのネズミ、モグラ、センパイ、イヌたちが再び笑顔を取り戻すことができただけに、原作のその後を描いた映画には必要不可欠な存在だったと思う。
そうしてみんなが笑顔で、ワニとの思い出を抱えて前に一歩を踏み出したのを見て、あらためてこの『100日後に死んだワニ』という作品が、ワニのことが好きだったなぁと感じた。
だからこそ、全部たどたどしかったらよかったのに。エンドロールでキャストやスタッフの名前が手書き風の文字で描かれているのを見てそう思った。
“ヘタウマ”でシンプルなイラスト、素朴なストーリーで描かれた、等身大かつ身近にいそうな親近感溢れるワニが好きだったのに。だから、「どうして死んじゃうんだよ」って思いながら、少しでも幸せそうな日を送っている姿を見守るのが楽しかったのに。誰だって気付いていないだけで、“100日後に死ぬ”カウントダウンが始まっているのかもしれないから、日々を大切に生きようと背中を押してくれたはずだったのに……。
豪華な出演者じゃなく、素人みたいな演技にぎこちなさのあるキャストで、公開するのもYouTubeとか、動画配信サービスで5分のショートアニメとか、そういう小規模でこの作品が見たかった。たどたどしいなりに、不器用な仲間たちがワニとの別れを乗り越えていくところが見てみてたかった。後ろでお金がたくさん動くであろうことは4コマ漫画連載当時の賑わいぶりから薄々感じ取ってはいたけれど、それを全面に見せつけなくてよかったはずだ。淡々と毎日Twitterで更新されていたあの時のように、さらりとその後の100日も見せてほしかった。
そう思わずにいられない。ワニくん、あの時君が死ぬまでを見とどけた時間が、君が、恋しいよ。
三澤凛(みさわ・りん)
劇場アニメはもちろん、毎クールの深夜アニメもくまなくチェックしている大のアニメ好きライター。最近は『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』にドはまりしている。