『ザ・ノンフィクション』 わだかまりのある親の最期に何を話す?「最期の願い ~父と息子と家族の2週間~」
父:あの時はかわいそうだったな
息子:本当にそう思ってたの、あんまり家にいなかったじゃん
父:いたくてもいられなかった、仕事が忙しくて
息子:作ろうと思えれば作れたとこっちは思っている
(中略)
父:ダメ?
息子:やるせなくなっちゃうな
会話中の将大は、「激高」とか「ふてくされて」とか、そんな様子ではなく、淡々と訴えていた。このとき静徳は、首から下は動かない状況なのだが、将大は情にほだされず、最後も「やるせなくなっちゃうな」と、この件に関しては妥協できない、という意思を伝えていたように思う。非常にセンシティブなテーマでありながら、互いが互いに言いたいことを、感情的にならずに伝え合った、いいコミュニケーションのように見えた。
その後、静徳は発話も難しくなり亡くなる。将大は、最期の会話があのような形で終わってしまったことへの後悔を、番組スタッフに話していた。将大はどうすればよかったのだろうか。弱った父を前に「過去の件はもう過去のことだ」と“忖度する”選択肢もあったと思うが、それもそれで何か心にモヤモヤしたものが残りそうだ。父親との最後の会話のあと、将大は前より家族との接点が増えていっていた。それを見ると、きちんと不満を最後に伝えることで、将大にとっては一つの踏ん切りにもなったのではないかとも思う。
ただ、このくらい深い会話が、20年前、将大が一番つらいときにされていればよかったのに、とは思う。静徳が児童たちに最期に伝えたかったことであり、かつ静徳がかつて将大に対してできなかった「一番近くの人の気持ちを分かってあげ、感謝する」が、今日から実践されれば、救われる家庭はとても多いだろう。一方で、そんなことなど絶対やってやりたくなどない、という過去からのわだかまりが蓄積された家庭もとても多いと思う。家族は一番難しい人間関係だ。
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