『ザ・ノンフィクション』オタク業界とやりがい搾取の関係「ここでしか生きられない私~34歳 秋葉原メイド物語~」
もう一人の共同経営者であるあずにゃんは、アイドル志願だったが乃木坂46やモーニング娘。のオーディションに通ることができず、アイドルとしての活路をHEART of HEARTsに見いだし、店の選抜アイドル5人組の1人でもある。16年の『TOKYO IDOL FESTIVAL』に出演した際の映像をうれしそうに番組スタッフに見せていた。
あずにゃんも店に対する責任感はとても強いように見え、優しい性格でスタッフを叱れないもちに対して不満があるようだ。ある日、深夜の配信中、もちが「寝落ち」してしまったのを見たあずにゃんは、もちに不満を伝える。そのような中で迎えたもちのメイドデビュー10周年イベントでは、花束を持った客たちがもちを訪ね、店は久々の賑わいを見せていた。
「頑張る」よりも冷静さが必要ではないか
番組を見ていて一番気になったのは、もちがスタッフの給料を優先するため自身の報酬を減らしていた、というくだりだ。コロナでもちの貯金は尽きたと伝えられており、番組中、夜になってようやくその日の食事としてもちが食べたのは、1本のサラダチキンバーだった。
もちがオーナーなら「店を守るために身銭を切る」は選択肢としてあるかもしれないが、番組を見る限り、もちの上には「会長」がいるとあり、店の実質的なオーナーはこの会長ではないかと思う。そうであるなら、もちが身銭を切ってまで従業員の雇用を守ったり、もちとあずにゃんがメイドカフェ営業後も朝方まで配信を続ける、という過酷な生活を続ける前にやることは「オーナーへの相談」ではないだろうか。
もちとあずにゃんが二人暮らすワンルームは、会社が借り上げていると伝えられていたので、義理があって言い出しにくいのか、すでに相談して芳しい回答が得られず、自分たちでやるしかないと諦めているのか。または、もちとあずにゃんが切り盛りしていくしかないような契約になっているのか。はたまた、会長としては店をたたんだり、休業してもいいと思っているのだが、もちとあずにゃんがそれを回避したいがために奮闘しているのだろうか。
もちもあずにゃんも「自分が頑張ればいい」の人のように見えた。しかし、明らかに二人とも、もうすでに頑張っている。もちの働き方を見て、そこまではやれないと話す10代スタッフたちは冷淡なのではなく冷静なだけであり、もちとあずにゃんの働き方こそが冷静さを欠いているように思う。
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