コラム
オンナ万引きGメン日誌

「あら、嫌だ。こんなところで……」万引きGメンは見た! 変態少年のおぞましき“遺留品”

2021/07/10 16:00
澄江(保安員)

 出勤の挨拶を終えて、近くの喫煙所で勤務前の一服をつけていると、並びの書店で勤務する顔見知りの男性保安員(42歳)から声をかけられました。太い眉毛と長いもみあげ、それに痩せた体が特徴的な人で、その風貌と毛深さから“ワッキー”と呼ばれて親しまれているプロ意識の強い同業者です。違う事務所に所属しているものの、お互いがベテランのために付き合いは長く、過去には数件の検挙を共にしています。

「ご無沙汰しています。最近、どうですか?」
「あら、こんにちは。ここは、久しぶりなんですよ」
「そうでしたか。私はよくここに入っているんですけど、最近は中高生が多いんですよ。鬼滅(の刃)の全巻狙いとか写真集狙いが多くて……」

 たしかにこのあたりは私立学校が多く、夕方になると学生さんの来店が目立つようになります。彼によれば、某学校内では万引きが流行っている節があるからと、夕方は学生さんを中心に警戒すべきだとアドバイスされました。有事の際は、お互いに協力し合うことを確認して、ひとり現場に入ります。

 気になる不審者を見つけられないまま夕方を迎え、学生の来店が増えてきたためにコミックと写真集の売場を中心に巡回していると、女性タレントの写真集コーナーに佇む制服姿の少年が目に止まりました。おそらくは高校生でしょうか。豊満なグラビアタレントのヘアヌード写真集を売場の死角に持ち込み、右手の爪でラッピングを切り裂いていたのです。

 もちろんマナー違反といえる行為ではありますが、これだけでは声をかけるに至りません。その目的が判明するまで注視すると、ラッピングを外して売場に放置した後、目を背けたくなるほどのスケベ顔で写真集のページをめくり凝視しています。それからまもなく、左手の親指で本を押さえてページを固定した少年は、顔を左右に振って周囲の警戒を始めました。ページを開いて固定しているところを見れば、商品を隠すつもりではなさそうで、何をするのか気になります。すると、おもむろにズボンのチャックを下ろして、あろうことかその場で自慰行為を始めました。

(あら、嫌だ。こんなところで……)

 ここで声をかけて捕まえることもできますが、私も女。まだ未成年者とはいえ、店内で性器を露出する男性に声をかける勇気が出ません。

(しまったところで声をかけたら否認されるかもしれないし、タイミングが難しいわね。あの写真集は、どうするのかしら)

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