『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』里親と娘、そして20年連絡のなかった実母からの手紙「ママにしてくれてありがとう~血のつながらない母娘の12年~」

2021/06/21 17:36
石徹白未亜(ライター)

里親、里子は5年連続で増えているも……

 しかし、そこから増加傾向に転じ、平成30年では1万2,315世帯まで増加している。平成30年度の直近5年を見ても、グラフ上では登録里親数は「右肩上がり」の増加ぶりだ。少子化が進んでいることを思えば上々の数値に思える。

 一方で、2018年前後における世界の先進国における要保護児童に占める「里親委託児童の割合(つまり、児童養護施設などの施設で育つのではなく、里親のもとで育っている子どもの比率)」を国別に比較すると、日本は21.5%で、グラフ内で比較対象だった欧米各国や、また香港や韓国と比べてもひときわ低く、「児童養護施設での養育」が中心になっていることがわかる。

 ただし、この調査は8年前の10年ごろに行われたものもあり、それを見ると当時の日本の里親委任児童の比率は12.0%とさらに低い。諸外国にはまだ及ばないが、ここ近年でも改善しつつあることはわかる。しかし、里親だからいいというわけでもなく、里親をたらいまわしにされてしまうケースは当然望ましくない。

 施設での養護から里親の養護に単純に切り替えていけばよいという話でもなく、その質も重要だし、美香が参加していたような里親会のような、その後の里親側の支援、サポートも欠かせないものだろう。一筋縄でいかない課題もたくさんある中で、それでも今も、美香夫婦のように目の前の子どもが子どもらしく子ども時代を過ごすために動いている里親、児童福祉関係者の人たちが日本の各地にいるのであり、このような立派な人たちのことを心から尊敬する。

 次週は「はぐれ者とはぐれ猫 ~小さな命を救う男の闘い~」。猫の保護に人生をささげる活動家・阪田泰志。身勝手な飼い主、多頭飼育の崩壊……。猫を救いたい男の前に広がる過酷な現実とは。


厚労省ホームページ

2010年度版「諸外国における里親等委託率の状況」(P11)
2018年度版(P29)「諸外国における里親等委託率の状況」

石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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最終更新:2021/06/22 19:05
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