コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」
太田光は「パワハラ」、有吉弘行は「いい先輩」? 対照的な“後輩指導”に学ぶ、年長者の「無難な選択」
2021/06/11 12:30
とはいうものの、先輩のどんな言葉でもパワハラだと感じやすい受け手がいることも事実だろう。「自分について考えてばかりいる人」や「相手のことを考えられない人」が、それに当てはまると思う。
芸能界は努力したからといって、それが必ず報われる世界ではないが、「売れたいけれど、売れない」時の対策として考えられるのは、「相手を研究すること」だろう。仕事をもらえる人と自分の違いを比較したり、仕事を与える側(番組のプロデューサーなど)はどんな芸が好きか、何を求めているのかを分析することで、自分の足りない部分を補強するのだ。
けれど、「自分について考えてばかりいる人」や「相手のことを考えられない人」は、それができない。「私は売れていない、だからやめよう」でも「私は売れていないけど、まき返すぞ」でもなく、「売れていない私、かわいそうな私」というふうに、私の評価、私の価値みたいなものばかりを気にするので、次の手を打てない。
この状態に陥ると、先輩の“指導”は“ダメ出し”にしか聞こえず、「傷つけられた」「パワハラだ」と思うのではないだろうか。売れていない自分を俯瞰で見られるかどうかがポイントで、客観性がない人はパワハラに敏感なのだと思う。
こうして整理すると、先輩が後輩に求められていることを理解せず、しかもその後輩が「自分について考えてばかりいる」「相手のことを考えられない」タイプである場合、あらゆるハラスメントにつながっていくことがわかる。
その結果、有吉のように「ダメ出しはしない」のが、先輩として最も無難な選択肢になるのだろう。