コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

熊田曜子の発言だけで、夫を“悪者”と決めるのは不公平? 「夫婦はどっちもどっち」だから“悪口”は難しいと思うワケ

2021/06/03 21:00
仁科友里(ライター)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「すべて事実です」熊田曜子
本人直筆コメント、5月31日

 若かりし頃のビートたけしが、写真週刊誌「フライデー」(講談社)編集部を襲撃したことがある。

 当時、既婚者だったたけしは、妻とは違う女性と交際しており、その女性に対して同誌が強引な取材を行ったとして、たけし軍団の若手芸人を連れて編集部に押しかけた。その結果、傷害事件に発展し、たけしは懲役6カ月、執行猶予2年の判決を受けている。

 世間では、報道(言論)に対し、暴力で報復するのは民主主義に反するとたけしを叩く声が上がっただけでなく、編集部の強引な取材方法にも非難が集まった。そんな中、マスコミはたけしの実母・北野サキさんにコメントを取りに行ったが、彼女は「あんなどうしようもないやつは、死刑にしてください」という返答で、報道陣を爆笑させたという。

 自分の息子を死刑にしたい母親は、そうそういないだろう。「本来なら、かばうはずの身内が、死刑でもいいと思うほど怒っている」と突き放すことで、「お母さん、そこまで言わなくても……」と世間のたけしに対する溜飲を下げさせたのだと思う。実際、のちにたけしが「あんなことを言ってひどい」とサキさんに抗議すると、「ああ言わないと収まらなかった」と、愛ゆえの行動だと説明したそうだ。

 サキさんのコメント力はたいしたもので、たけしの前妻・北野幹子が不倫騒動を起こした際は、押し寄せたマスコミに対し「夫婦のことは、どっちがいいとか悪いとかない」と、今度は息子であるたけしも、その妻の幹子も責めない発言をした。

 なぜフライデー襲撃事件の時は息子を強く責め、妻の不倫は責めないのか。フライデー襲撃の事件は明らかに法律違反で、警察のお世話になる案件だし、被害者も存在するから、罰を与える必要がある。しかし、不倫の場合はそうではない。

 確かに、妻の不倫はいいことではないが、のちに報道された通り、たけし自身も妻子がいる身でありながら、“恋愛”をやめてはいなかった。家庭を顧みない夫の行為が妻を傷つけ、ひいては不倫の遠因となった可能性はゼロとはいえないだろう。「夫婦のことは、どっちがいいとか悪いとかない」というサキさんの言葉は、「たけしも幹子も、どっちもどっち」の意味だと思われる。

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