中学受験の低年齢化が止まらない! 有名進学塾は小1段階ですでに定員オーバー、「落とし穴」にハマった親子も!?
大手進学塾の多くが成績順にクラス分けをしているので、子どもの世界であっても、微妙なヒエラルキーが生まれてしまう。最上位の子たちも決して太郎君を見下しているわけではないのだろうが、そこには見えない結界があるかのようだ。
「私は『そんな価値観の世界で生きるなんて意味があるのかな?』と疑問に思い、太郎に『嫌なら、塾をやめたって、受験をやめたっていいんだよ』と言うんですが、太郎が首を縦に振らないんですよね⋯⋯。『絶対に(最難関校である)Kに入る!』って。こんな成績で、入れるわけがないんですが⋯⋯。でも、私は私で、6年生のここまできているのに、本当に受験をやめさせていいのかな? って思いもあって、どっちつかずなんです」
中学受験は知識を広げ、理解する喜びを得る機会としては素晴らしいものだと思うが、一歩間違うと、子ども自身が「成績こそ全て」という価値観に、がんじがらめになる危険性を孕んでいるものだ。
ところが、最近、太郎君に動きがあったと咲子さんから連絡が入った。
「実はS塾を辞めました。太郎に円形脱毛症が見つかって、かかりつけ医に叱られたんです。その先生も中学受験では苦労したんだそう。そんな話をしてくださった後、太郎に向かって『塾はしがみつく存在ではなく、選ぶもの』って諭してくれました」
そのかかりつけ医の言いつけを、幼い頃から不思議と守ってきたという太郎君。その先生が医学部に強いS学園出身と聞くや、太郎君はS学園のことを調べ出し、そこを本命校にしようと思い立ったそうだ。
「先生が『S塾はこの際、リセットして、自分のペースで見てもらえる家庭教師についたらどうだ?』とプロの家庭教師まで紹介してくれたんですよ。幸い、とてもいい先生で、今はまず、太郎の失った自信を取り戻してくれようとしています」
太郎君の受験結果がどうなるのかは未知数ではあるが、必ずしも、低学年から有名塾に入っていれば有名校に合格するというものではないということを示す話でもある。やはり、塾の教育方針によっても合う合わないがあるということを親は知っておくべきだと思っている。