変装万引きGメンVS常習妻! 「あんた、なにやってんのよ!」捕まった女が取った驚がく行動とは?
売場に戻ると、件の女性が、チラチラと周囲を警戒しながら店内を歩いていました。この店には2度と立ち入らない。前回の捕捉時に交わした誓約を破っていることで、周囲を気にしているのなら理解できますが、その挙動は目を離せないほど怪しいレベルです。追尾中、一度すれ違ってしまったものの、顔を見られないよう背を向けたこともあって気付かれた気配はありません。自分の変装に自信を深めて、少し積極的に彼女の行動を見守ると、まもなく着手に至り、いくつかの生鮮食品をバッグに隠しました。安価でかさばる葉物野菜などの精算だけを済ませて、何度も後方を振り返りながら店の外に出た女性に、そっと忍び寄って声をかけます。
「こんにちは」
「キャーッ!」
おそらくは、極度に緊張していたのでしょう。後方から声をかけると同時に、驚きのあまり悲鳴を上げた彼女は、その場に尻餅をつきました。床にお尻をつけたまま、恐怖の表情を浮かべて、私から逃れるように手で後ずさりしています。
「大丈夫だから、落ち着いて。私のこと、わかりますよね?」
マスクを取って顔を見せると、しばし呆然とした女は、下唇を噛んで顔を背けました。
「また事務所に来てもらわないといけないんですけど、立てますか?」
「……ごめんなさい」
この店の事務所は、隣の建物の3階にあります。手を差し延べて立たせて、これ以上ないくらいの重い足取りで歩を進める女の手を引きながら商品搬入口を経てエレベータに乗り込むと、タイミングよく店長も乗り込んできました。
「あれ? なんか見覚えのある人だなあ」
「はい。ちょっと前に連れてきた人が、また……」
「はあ? 出入禁止なのに、また来てやったのかよ。どうしようもねえなあ」
応接室のベンチに座ってもらい、顔を上げられないでいる女に隠したものを出すよう促すと、いくらや天然まぐろの刺身、ローストビーフ、カマンベールチーズといった高級食材がバッグから出てきました。なにを聞いても顔を背けて答えないので、前回の記録をファイルから引っ張り出して、新たな報告書に転載します。それによれば、店と同じ町内会に所属する女は34歳。前回の犯行は、およそ2週間前のことで、その時にはホタテの刺身や和牛ステーキ肉、それに高級ワインを盗んでいました。被害品から察するに、高級志向の人のようで、その暮らしぶりが気になります。
「なんだ、あんた。いいものばかり盗んで、まったく反省してないってことだな。申し訳ないけど、今日は警察呼ぶよ」
「え? 警察だけは、すみません。あたし、離婚されちゃう!」