『ザ・ノンフィクション』コロナ禍のタクシードライバーと乗客たち「東京、タクシー物語。前編 ~コロナとシングルマザーの運転手~」
しかし、泥酔した人をタクシーに乗せる上で気になるのが「嘔吐問題」だ。知人が若い頃タクシーで粗相をしてしまい、3万円を払ったと話していたが、3万円受け取ったとしてもそのあとの始末を考えれば割に合わないとすら思う。
特にコロナで吐しゃ物は「単にイヤなもの」だけでなく「感染源になりかねない」という意味も増えた。心臓が悪い70歳になる母親と同居し、タクシー運転手という不特定多数に会わざるを得ない仕事をしている恭子にとっては、なるべく避けたいものだろうと思う。
逆境で出てくる人間性と本性
タクシー運転手の給料は歩合の割合が高いという。収入減にあえぐ全ドライバーに対し、葵交通の田中秀和社長が年末に5万円の見舞金を出しており、大した人だと思った。逆境のときにどう振る舞うかに、その人の本性は出ると思う。
私もコロナにはうんざりだが「コロナに対しどんな発言をしたか、どんな行動をしたか」は、その人の人間性が垣間見える。「コロナに関しての発言や行動でイラッとしたり、モヤっとした知人や親類」は誰しも数人いるのではないだろうか。
乗客の赤坂のホステスや吉本芸人・西村は、恭子のことをねぎらいつつ下車していた。番組のカメラがあるからでしょ、という見方は意地悪すぎるかもしれないが、それでも、逆境時にそういう気遣いが自然にできる人はやはり感じがいいし、そうありたいと思う。
また、個人的には倉本氏が早朝の歌舞伎町で乗せるホストクラブ好き、いわゆる「ホス狂い」の女子たちにも話をぜひ聞いてみたい。これは別に、「今、この時世にホストクラブに行く是非」を問いたいものではない。『ザ・ノンフィクション』では「ホストクラブ」を舞台にした放送が過去にいくつもあったのだが、それらはほぼ「ホスト側」の話だったので、姫である客が、何を思い店に足を運び、朝の歌舞伎町でタクシーに乗るのか、という思いを聞いてみたいと思ったのだ。
次回は今回の後編。離職を選ぶドライバーもいる中で、葵交通には2人の20代女性ドライバーが入社する。2人はなぜこの困難な時期にタクシードライバーの道を選んだのか?