コラム
高橋ユキ【悪女の履歴書】
内縁の夫が「新たなる妻を迎えようとした」……傍聴に人々が殺到した、殺害未遂の女医の告白【神戸毒まんじゅう殺人事件:前編】
2021/05/03 19:00
「私を踏み台にして学位を得た橋本が、なんら恥ずるところなく独身者として新たなる妻を迎えようとしているので、橋本への愛は一転して憎しみを帯びるようになりました」
こうした発言が週刊誌などで報じられるや否や、花子への同情論が巻き起こった。3日続いた公判の終盤、検察官は殺人ならびに同未遂罪として花子に無期懲役を求刑したのに対し、裁判所はのちに、傷害ならびに同未遂罪とし、なんと懲役3年の判決を言い渡したのである。
当然ながら検事はこれを不服として控訴。舞台は大阪控訴院に移った。そこでも花子への注目度は衰えることはなく、裁判所に詰めかけた人々の群れで大騒ぎとなる。開廷後ほどなく「傍聴満員」のフダが掲げられたが、締め出された人々は一目でも花子の姿を見ようと雪崩れうちに。天満署の警官が出動する騒動となった。別の期日では前夜の午後6時から蓙を敷いて並ぶ傍聴希望者もいたという。
▼続きはこちら▼
参考文献
「週刊朝日」(朝日新聞出版)1940.3.3
「サンデー毎日特別号」(毎日新聞出版) 1957.5.1
最終更新:2024/04/18 10:53