コラム
「元極妻」芳子姐さんのつぶやき104

「古きよきヤクザの時代」の終わり――引退した神戸山口組幹部が語る“いい話”

2021/04/25 16:00
待田芳子(作家)

 あと、個人的にすごく好きなのは、『続・最後の博徒 波谷守之外伝』(正延哲士/幻冬舎、1984年)にあるホラーなエピソードです。波谷親分は1945年に渡辺組の渡辺長次郎組長の盃をもらうのですが、その渡辺組にいた古田義行さんが賭場を開くために借りたおうちが「出る物件」でした。1937年頃のようです。

 古田さんが体験したかどうかは書かれていないのですが、前に住んでいた店子さんたちは「毎晩不気味な物音がして怖くて住めない」と、みんな出て行ってしまったそうです。困った家主さんが「住んでくれる人にはお家賃はタダで、さらに当時で100円(今なら20万円くらい?)をあげる」という新聞広告を出したんですね。古田さんは暴れん坊で有名だったので、親分も「お前なら大丈夫だろう」となりました。

 そのおうちの庭に入り口をふさがれた土蔵があったので、古田さんがハシゴをかけて2階から中をのぞくと、なんと女物の着物をまとった骸骨さんが2体……。警察の検証のあと、古田さんがお坊さんに頼んで丁寧にお弔いをして、梅と桜の鉢をお供えしたら、お正月にきれいに花をつけたのだそうです。「むしろ縁起がいい」ということで、賭場も繁盛したそうです。

 波谷親分と直接は関係ないんですけど、正延先生の「取材の過程で聞いたちょっといい話」は、いつもおもしろいです。

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