コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

3時のヒロインが容姿ネタを封印しても、差別はなくならない……「オジサンはなぜ外見をイジられないのか」問題にメスを入れるべき理由 

2021/04/22 21:00
仁科友里(ライター)

 そんな容姿いじり問題について、同番組に出演したEXIT・兼近大樹は「オジサンと呼ばれる世代が笑ってくれるから、人をいじったり攻撃したり怒ったりしてみせる」と、いじりがオジサンへの“サービス”であると主張した。ゲストのキャスター・安藤優子が「なんでいじるとオジさんは笑うんですかね?」と質問すると、兼近は「それが笑いと思っていた」と返していたが、私はここをもうちょっと掘り下げてほしかったと思う。

 統計を取ったわけではないので主観だが、オトコの芸人よりオンナの芸人が、無意味に容姿をいじられる率ははるかに高いのではないだろうか。例えば、フットボールアワー・岩尾望は「ハゲとるやないか」などと薄毛をいじられることもあるが、ヘアケア製品のPRに起用されるなど、仕事につながったという意味では、不利益を被っていないだろう。

 しかし、オンナ芸人の場合、そんな単純ではないように感じる。例えば、『うたばん』(TBS系)に友近が初めて出演し、中森明菜のモノマネを披露した時、司会のとんねるず・石橋貴明は、ネタを見る前も見終わった後も、ずーっと「足みじけー」と笑っていた。この場合、いじられることで友近に特に得られるメリットがあるとは思えず、これはいじりではなく、ディスりではないだろうか。

 また、友近も石橋もルックスが必須とは限らないお笑いの世界に身を置いているのに、友近は容姿について言われるが、石橋の容姿を本人の前でとやかく言う人を私は見たことがない。つまり、容姿が必要でない世界でも、女性はけなされる一方、男性が同じことをされるのは稀で、ましてや石橋のような権力者であるオジサンが面と向かっていじられることは、ほぼ皆無ではないか。

 自分の容姿は棚に上げて、女を(男も)下に見てバカにしてもよい。自分はジャッジする側の人間であると信じて疑わない。オジサンというのは、かなりの特権階級といえるだろうし、その権力の味は、ひとたび覚えたら忘れられないのではないか。また容姿によって、オジサンに愛され、権力のおこぼれを味わった女性は、美しくない女性は価値が低いと見下すようになり、容姿の悪い女性を嘲笑するようになるだろう。

 「オジサンは、なぜ外見をいじられないのか」……この問題にメスを入れなければ、芸人が容姿ネタを封印しようとしまいと、容姿差別がなくなることも、容姿のことで傷つく人も減らないのではないか。

 話を3時のヒロインに戻そう。容姿差別はなくならないにしても、いまこのタイミングで容姿いじりをやめたのは、賢明だと思う。新しい笑いを作っていくのは難しいだろうが、これは大きなチャンスでもある。「あの人たち、楽しそう」「ああなりたい」と思わせた芸人が、今売れるのではないか。3人仲良く、頑張っていただきたい。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2021/04/22 21:00
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