『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』2万1,701人の、日本で就学不明の外国籍の子ども「ふたりの1年生 ~新米先生と海の向こうから来た女の子~」

2021/03/22 18:01
石徹白未亜(ライター)

 ナイヒとナイヒの母親も、もし「日本ですでに暮らしていた叔父夫婦」という頼れる存在がなかったら、日本での生活は全く違った過酷なものになっただろう。頼れる血縁者や同じ国の出身者のコミュニティがないまま日本で暮らす外国人の孤立が、就学不明の2万1,701人という数を映しているように思う。

 法律上、「教育を受けさせる義務」の対象は自国民のみで外国人の子ども(日本国籍を持っていない者)に就学義務はない(※2)。しかし、公立の義務教育諸学校への就学を希望する場合には、国際人権規約なども踏まえて、日本人児童生徒と同様に無償で受け入れができるよう、文部科学省は全国の教育委員会に通知しているとのこと。

 だが現実問題として、外国人向けのプログラムなどない公立学校では日本語についていけず孤立し、そのまま学校に通えなくなる外国籍の子どもも多いという。

 一方、日本語がわからない子どもに配慮があり、子どもが通いやすいであろう外国人学校は、授業料が高額という問題もある(※2)。日本は人口が減る一方で、社会が外国人抜きでは成立しなくなっている。孤立した2万1,701人は社会問題だと思う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「新・上京物語 前編 ~煙突とスカイツリーと僕の夢~」。製紙工場の煙突が立ち並ぶ北海道・苫小牧市から料理人を目指し上京する18歳の一摩。就職先は洋食の巨匠・大宮勝雄シェフが経営する有名店「レストラン大宮」だ。夢と現実の間でもがく18歳の姿を見つめる。


※2:外国人は「対象外」ってどういうこと? 外国人”依存”ニッポン(NHKの特集サイト)

石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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いとしろ堂

最終更新:2021/03/22 18:01
外国人の子ども白書
自分と違う環境の人もいると想像し続けなきゃ