「5歳児餓死事件」赤堀恵美子と同じく洗脳・支配……「福岡4人組保険金連続殺害事件」の死刑囚・吉田純子とは?
平成元年、久留米に住んでいた純子は8年ぶりに美由紀と連絡を取り、急速に親しくなっていく。美由紀もまた看護婦となっていたが、独身だった。純子は次第に美由紀に異常な執着を示していく。アパートにも足しげく通うだけでなく、自ら望んで美由紀の勤める病院に転勤するようになったのだ。当時美由紀は不倫をしていて、別離を望んでいたが、純子はそこにつけ入った。
「私のバックには政界や警察にも顔が利く“先生”がいる。その先生が全部始末してくれる」
不倫を清算してくれるという純子の申し出を美由紀は当然受け入れた。純子によれば“先生”は配下の人間が沢山いる大物で、影響力も強くかつ怖い存在でもあるという。だが、実際にはそんな“先生”は存在しない。純子のデッチ上げた架空の人物だったが、どんな偶然か不倫相手は美由紀の前から姿を消した。美由紀は“先生”を信じ、同時に純子をも信じた。その後も純子は何かにつけ“先生”を持ち出し、美由紀を心身ともに縛っていくことになる。
その後、純子は自分との同居を熱心に勧めるようになる。「(トラブルはまだ続いているから)先生がうちに避難するよう言いよる。暴力団を使ってソープで働かせて東南アジアへ売り飛ばす計画らしか」。美由紀の恐怖心を煽る純子。平成3年、美由紀はついに同居を決意する。純子は当時、夫と子ども3人で高級マンションに住んでいたが、美由紀はここで純子の家族と共に住むことになる。
同居して1年、不自然な同居に夫が家を出たが、同時に純子は美由紀に対し執拗に肉体関係を迫るようになった。最初は抵抗した美由紀だったが、純子は時に罵倒し、時には優しく口説き、それでも拒否されると今度も“先生”を持ち出した。
「先生が『美由紀は何度も中絶して子どもが産めん。だから(純子と)関係を持たないけん』とおっしゃるとよ」
そうして2人は関係を持つようになる。だがその行為は、美由紀が一方的に純子に“奉仕”させられる形だった。本来美由紀は同性愛者ではない。よってその苦痛を紛らわすため、行為の前に酒や薬を使用もした。それでも耐えられずに何度か逃走も図っている。その度純子に見つかり連れ戻された。「先生に頼めばあんたの居場所なんてすぐにわかる」と脅された美由紀は、言いなりになるしかなかった。こうして純子の性欲処理に加え、3人の子どもの世話や家事も美由紀の役割となっていった。ある時純子は「(美由紀との間に)子どもができた」という嘘をついたことがあった。だが美由紀は、こんな純子のあり得ない嘘さえ信じるようになっていた。
その間純子は、美由紀から金を巻き上げ、給与や通帳の管理をするようになる。美由紀の母からも「美由紀が交通事故を起こした」と550万円を奪った。さらに義兄によるクレジットカード窃盗をデッチあげ、美由紀を親兄弟から分断していった。純子による支配、洗脳はこうして磐石なものとなっていくのだ。
(後編につづく)