コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

吉本興業から“報復”を受けた? ハラスメントに抗議して1人になった加藤浩次に、いま伝えたいこと

2021/03/11 21:00
仁科友里(ライター)

 一般人の世界でも、社員が大会社の会長を批判して、無傷でいられるわけがない。加藤は必ず“報復”されると思っていたところ、今年になって、彼のレギュラー番組『スーパーサッカー』『この差って何ですか?』(ともに同)が、この春終了することになった。また『スッキリ』の裏番組であるTBSの『グッとラック』は、まもなく終了し、その新番組のMCには、吉本興業の後輩、麒麟・川島明が抜てきされた。吉本が、加藤包囲網を作っているのではないかという記事もちらほら見られた中、3月10日放送の『スッキリ』で、加藤は「吉本興業さんのほうから『契約は延長しない』と言われまして」とはっきり発言したため、やはり彼は吉本に「切られた」ということだろう。

 エージェント契約にした加藤と吉本のギャラの取り分は「8対2」だといわれており、吉本からすれば、確かにこの契約ではうまみが少なすぎるのかもしれない。しかし私はそれよりも会社の見せしめ的なものを感じた。会長をテレビで批判するような加藤を放置すれば、第2、第3の加藤が生まれかねないし、そうすると、組織自体が崩壊する危険もあるだろう。一気に排除するとネットでいろいろ言われるので、時間をかけて実行したのではないだろうか。今のところ『スッキリ』は続くそうだが、この分だといつまで続くかはわからない。加藤は、会社のハラスメントに抗議した結果、組織を優先させたい吉本によって、窮地に立たされてしまったわけだ。

 闇営業問題に関しては、ダウンタウン・松本人志も「松本、動きます」とツイートして、称賛された。宮迫の代わりに番組に出たり、見えないところで吉本芸人に対していろいろと尽力したのだろうが、何がはっきり変わったのかは、一般人には伝わってこない。それは松本の能力不足ということではなく、上述した通り、利権が複雑に絡んだ業界というのは、そう簡単に壊せないからだと思う。

 「#MeToo運動」がSNSで世界的な盛り上がりを見せたが、ネットの意見が世の中の総意ではないし、仮に総意だったとしても、抗議する人の思うようにコトが進むかはわからない。だから、社会や組織に歯向かうなというのではなく、私は加藤の件も踏まえて「1人ではとても太刀打ちできないし、社会的な死が待ち受けている可能性もあるから、1人で戦うな」と言いたいのだ。まず同じ志を持つ人たちを探して、その人たちと団結する。事務所の庇護をなくして1人になった加藤も、再スタートを切るにあたり、まず信頼できるスタッフで周りを固めることから始めるといいのかもしれない。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2021/03/11 21:00
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