『ザ・ノンフィクション』スマホ没収、丸刈りの過酷な修行生活「ボクらの丁稚物語 ~泣き虫同期 4年の記録~ 前編」
なお、秋山木工のホームページを見ると、この過酷な丁稚制度について詳細な説明がある。それでも入社は過酷な競争をくぐり抜けないといけないほどの高倍率だ。これは入社する側にとってのネガティブ要素も包み隠さずに書く秋山木工の姿勢が誠実だと評価されているのもあるように思う。
一方、世の中のたいていの企業の採用情報は、建前やきれい事ばかり書かれており、入社してみたら「こんなはずでは」というギャップは大なり小なりつきものだ。しかし秋山木工の場合、そのギャップはないといっていい。
もっといろいろな企業が、秋山木工のように労働環境をありのままきちんと伝えたほうが、入社後にギャップを感じて辞めることも少ないだろうし、会社も従業員も互いに不幸にならずに済むのではと思った。
優秀だったのに辞めてしまった久保田の「待てなさ」とは
優秀で同期のリーダー格ながら、入社1年と少しで退職を選んだ久保田は、苛立ちなどの感情がすぐ顔にでてしまうことを先輩社員に指摘されていた。そんな久保田は、私には「待てない」性格に見えた。
その「待てなさ」は、裏返せば「(自分自身は)テキパキできる」ことでもあり、良い方向では飲み込みの速さ、頭の回転の速さといった仕事上の優秀さにもつながっているから同期のリーダー格だったのだろう。しかし、この「待てなさ」は悪い方向にも働いている。
番組内では久保田が加藤に対し、同期に言うというより大人が子どもを叱るような感じで叱責し、加藤がそれに押し黙ってしまうシーンが放送されていた。この時、「待てない」久保田が、加藤の「黙り込む」という反応の遅さにイライラしているように見えた。「待てない」人は待てなさゆえに、気が短くなりがちだ。さらに、「待てない」タイプは見切りも早いため、物事が長続きしない傾向もあるように思う。最終的には退社を選んだ久保田の行動は、長所にも短所にもなる「待てなさ」が根っこにあるのではないだろうか。
「頭は悪くないのに、どうもぎくしゃくしがちでうまくいかない」人の中には、「待てない」人も結構いるように思う。「待てない」人ほど、物事をテキパキこなせるといった「速さ」に価値を置きがちなので「待つ」能力を軽視しがちに思う。
しかし「待つ」とは「テキパキやる」と同等の偉大な能力だ。しかし、のんびり屋の人に「急げ」というのが酷なように、待てない性格の人に「待て」というのも無理なのは、私自身非常にせっかちなのでよくわかる。
来週の後編では辞めた久保田のその後の生活も放送されるようなので、注目したい。
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